連携会派の合同行政視察へ秋田県に行って来ました。
初日は由利本荘市の「学力向上の取り組みについて」
人口は8万5千人、ちょっと前の大村市ぐらいですが面積は十倍!、一市七町が合併してできた秋田県一の面積をもつ(神奈川県の半分ぐらい)広大な自治体です。選挙の時が大変そうだなあ。
財政状況はお世辞にも良いとは言えません。
実質公債費比率20.3%(大村市は10.5%)財政力0.36、自主財源比率23.5%(大村市は50.2%)。橋下市長の主張のように自主徴税権を持たされて地方交付税を廃止されたら大変なことになるでしょうね。
まあ、なんとかなるのは日本国内でも東京をはじめ数カ所しかないと思うのですが。
農業と先端技術工業を産業基盤とする地域です。TDKの本社が隣町にあり、関連企業が多いとのこと。
また豪雪地帯でもあり豪雨災害、突風被害など自然災害多い地域だそうです。ビニールハウスなどが損傷することが多いなど厳しい自然環境。東北人の粘り強さはこんなところからきているのかもしれません。
さて、由利本荘市をはじめ秋田県は学力テストが全国トップレベルの地域でもあります。その教育行政について勉強して来ました。
まずあげられたのは少子高齢化がもたらした副産物ともいえる少人数学級制度が学力向上に寄与しているのではないかということ。
先生の目が行き届く、と言ったところでしょうか。
二学期制は混在しているようで、やってはみたがメリットが少ない、という理由から三学期制に回帰しているそう。
大きな理由は節目が多いこと=子どもたちの変化、成長をこまめに見れる、というお話でした。
学力の高さのキモは家庭学習の習慣がしっかり根付いている、ということ。
そして、それを学校の先生がしっかりフォローしている。という事です。
一時間以上の家庭学習が70%以上に定着しているそうで、毎日学校でノートを集め、しっかり添削、コメントをいれて返すとか。
それが原因なのでしょうか、県内には学習塾が少なく私学が一つしかないそうです。
その他に学力対策委員会を設置、各種調査の分析や対策の検討を行ったり、任意の研修会の開催などはすべて手弁当、なんと講師もボランティア。
話を聞けば聞く程、献身的といっても良い教育現場。
秋田県の先生は大変そうだなあ、と思いましたが
「そう言われる事もあるが、これは先輩方が培って来たこと。我々にとっては当たり前のことです」
との言葉に静かな誇りを感じました。素晴らしいと思います。
ただあくまでも平均学力が高い、という事でありトップレベルの学力を持つ生徒の割合はそう高くない、ということ。
厚い中間層を形成しているが有名大学の進学数などは多くない、この辺が課題だということでした。
その他にも特色ある教育行政として、県立矢島高校、市立矢島中学校、が連携しています。体育館やグラウンドは共用、設置者は違うが同じ敷地内で生徒たちが学んでいます。ですが、いわゆるエレベーター方式ではありません。中高双方の生徒に良い影響があるとのこと。中学生アカデミーなるものを開催し、高校の先生が中学生を高校で教えているそうです。
デメリットはないのか?と訪ねましたが、特に見当たらないということでした。
中学生の親族が異性交友について心配されていたが高校生に節度が芽生えたとのことです。
図書行政にも力のいれようが伺えます。司書のほかに図書支援員を二校に一人配置、またネットワークが整備されており本を融通しあっています。
しかし支援員の待遇はあんまり良いとは言えないようで、ここにもボランティア精神が光ります。
中学校給食は全完備、調理は単独が殆どです。センター方式では面積が広いため輸送に難点があるそうです。地勢的コストと割り切るしかないみたいですね。
また教員OBを積極的に活用されているようです。
ただその弊害が若手が育たない、という事。ベテランに頼りすぎている場面もあるのでは、という事でした。
学力テストは業者に頼まず市全体で採点。図書館を本を読む場ではなく、調べ学習の場に等々、とにかく教育について多様な取り組みがなされています。
現場は多忙だが、惜しみなく働く教員がいる。意識の高さに支えられていると思う。これは、受け継がれる秋田の教員文化、誰からかやれと言われてやっているものではない。という事でした。天晴れです。
ここはオフレコで、と話された事もありました。
とにかく意気込みが伝わって来ますね。
待遇、給与うんぬんでは無い、ということで、いわば奉仕の精神だのみの感が。
ラスパイレス指数も類似団体平均を下回っている(定員管理ついては上回っていますが)
それをそのまま続けられるのか?という疑問が沸いてくるかもしれません。
しかし、待遇を良くしたからといって教育の質があがる、ということでもないでしょう。
こんな秋田の教育文化、是非とも受け継いでいってほしいものです。
メモ
県内の学力格差があまりない。
中間層が厚い、20年前の日本の姿だとの評価もある。
運動力調査では体格が良いが走力が劣っている
人口に対して生徒数が少ない、33名の小規模学級。
写真は鳥海山。その姿は雄大、うーむ登ってみたいぞ。
翌日は仙北市へ、角館を有する姉妹都市ですね。
長くなりすぎるので次のエントリーで。