世代間格差ってなんだ
~若者はなぜ損をするのか?~
高橋 亮平 (著), 小黒 一正 (著), 城 繁幸 (著)
「格差社会」なんて言葉がよく使われるようになりました。
(ちなみに間違っても小泉・竹中構造改革が格差社会をつくりだした、なんていう左派お得意のロジックに乗ってはいけません。誰かのせいにしたいのは分かりますが、ジニ計数を見て議論しましょう)
そして最近耳にするようになった「世代間格差」
私も先の市長選には世代間格差を自治体独自で手当てする「世代別減税」という政策を打ち出したりしてました。
この本では、雇用、社会保障、政治という三面から三者が世代間格差をとらえ、その解消につながる政策を「ワカモノ・マニフェスト」として発表しています。
雇用については流動化、同一労働同一賃金、等々の主張については異論無し。(ちなみに共産社民系の主張と勘違いしないように。ただし自民の石原幹事長も勘違いしてたらしい)
当ブログでも紹介した城氏の 「たった1%の賃下げが99%を幸せにする」 がコンパクトにまとめられています。
社会保障については小黒氏が年金・介護・医療の人生後半の社会保障格差の解消について。鈴木氏の 「だまされないための年金・医療・介護入門」 からの引用や似通った政策が打ちだされている。
ここでも現在の賦課方式から事前積立方式への移行が打ちだされている。
私も当初は賛成していたのだが、その政治的なハードル、40~60代のさらなる負担増を考えればかなり無理があるのかも知れない。高橋洋一氏の主張、賦課方式修正の方が現実味あり。
社会保障を政争の具にせず、国家の維持という議論を行う機関として「世代間公平委員会」の設置を、としているが、その人選が問題になる。政治任用は避けられないのでは。
章は前後するが、人生前半の社会保障(教育・子育て)と政治参画の格差については高橋氏。
子ども手当の理念は良いが方法が不味い、という主張には異論無し。財源が借金だから子どもが親に頼みもしない負債を背負わされているようなもんだ。そして現金が本当に子どもの為に使われるのか?という話。
ただしOECD諸国のなかで教育費の私費負担割合が4番目に高く、公的教育費がGDP比で2番目に低いという現実を忘れてはならない。
国の行く末を案じるなら、教育を強くすることこそそその礎になると思う。
もっと若い世代に厚い手当てをするべきなのだ。
(お金だけ、ちゅーことじゃありませんよ)
しかし、日本はなぜそうならないのか?
それを世代間の政治参画格差の面から論じてある。
ようは若い人は投票に行かない。そして人口が少ない。高齢者は投票に行く、そして人口が多い。おのずと著者いうところの「シルバーデモクラシー」、団塊の世代向けの政策になってしまうのだ。
私も介護を生業としているので大きな口は叩けませんが、社会保障を財源から本気で考えなければ国力を落とす元になってしまうと思います。
ただ、緩やかな衰退社会、ジャパン・シンドロームなんて言われているが、これも避けることのできない「変化」なのかもしれない。戦後の経済復興・発展という過去から脱却し、文化と精神の国づくりが必要なのかもしれない。
これまでの政治は活性化や発展を訴えることが常套であった。
そこから抜け出すのも新しい課題かも知れませんね。
この本は三人の共著ですが、1973年生まれ、74年生まれ、76年生まれと同世代の論客。我々世代の声も大いに政治にぶつけていきたいものですね。
巻末には各政党のマニフェストを3人が若者の視点で評価しています。
その切り捨てぐあいといったらもう・・・政治家が気の毒になってくる。
内容はこれまで読んだものと被っていましたが、コンパクトで軽く読めるのでお勧めの一冊です。