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学生NO.16115012:北村貴寿

非営利組織の経営 P.F.ドラッガー
第Ⅲ部
第1章 非営利組織にとっての成果
●成果を定義する
・非営利組織は成果を重視しない傾向があるが、企業の成果よりも大きな意味をもつ。しかし、企業よりも成果の把握の測定が困難。
・企業は利益によって測定できるが、非営利組織は直接成果を考え、測定方法を考えなければならない。
病院の救急治療室:どれだけ早く患者を診たか。何人の命を救ったか。
教会:礼拝参加率、地域貢献。あげるべき成果により運営が変わる。
エイズと闘う組織:どれだけ予防したか。何人の患者を支援したか。予防を成果とするならば、エイズとは無縁と考えているものが顧客になる。
・非営利組織は顧客ニーズに応えるだけでは不十分。顧客の欲求を生み出すこと。
事例:クリーブランド美術館
文化の守り手として美術品をしまい込んでいた。新館長がリピート率を成果の尺度とした。こうして時間をつぶす場所から地域の教育機関となった。
・ミッションを具現化するための成果の定義には落とし穴が二つある。
①大義だけを唱え、支援しない方が悪いとすること。重要なことは限られた資源を成果の期待できるところへ集中すること。
②大義の追求を考えず成果を求めること。金を集めやすい人気取り的なことに力を入れること。
事例:ドラッガー自身の関係する美術館
立派なコレクション寄贈の申し込みは筋の通らない条件付きだった。受け取れば矜持に関り、高いツケを払わされる。しかし、断ればコレクションは他の美術館に行く。

・企業は仕事ぶりに応じて対価を受け取る。非営利組織はそうではない。といって意図に反して支払いを受けるわけでもない。

●多様な関係者
・成果をあげるにはプランが必要。プランはミッションからスタートし、ミッションがあげるべき成果を規定する。ミッションからスタートしなければ成果はあげられない。顧客は誰かを考え、それぞれにとって成果は何であるかを考えなければならない。
・非営利組織と企業の最大の違いは多様な関係者の有無。かつて企業には関係者は一種類=顧客しかいなかった。当時は従業員、コミュニティ、環境、株主は制約要因であった。
・非営利組織には関係者がもともと多い。そのいずれも拒否権を持つ。
学校長:教師、教育委員会、納税者、保護者、生徒まで満足させなければならず、これら5種類の顧客がみな違う角度から学校を見ている。いずれも学校にとって欠くことのできない存在である。
病院:1960年頃まで地域の病院は基本的に医師の為に経営されており、医師が関係者だった。現在では医療費を負担する雇用主、連邦政府、会員制健康保険組合、病院職員まで利害関係者となった。より多く要求するようになったというよりも、彼らが専門性を高めたためだった。
教会:近年信者数を増やし、活動が活性しているのは、青少年、新婚、成人のそれぞれのマーケットのニーズを判別し、活動に反映させた為。信者のグループごとに目標設定し、担当者を配置している。

●長期の目標への合意
・非営利組織にとって最大の難問が、あらゆる種類の関係者から長期目標についての合意を得ること。関係者全員の関心を調和させるのは長期目標以外にない。短期の成果に焦点を合わせるならば支離滅裂となるだけである。
・自身の経験から、関係者全員の視点を長期目標に合わせない限り、支持も信頼も敬意も得られないと学んだ。関係者全員の関心事をプランに織り込まなければならない。
・それは建築のプロセスに近い。一度わかればそれほど難しくはないが、大変な作業になる。

●大義と経済性
・どんな成果が求められているかを考えれば、大義と経済性に関わる混乱による資源浪費を避けられる。非営利組織活動は大義であり神の御心であるが、経済性も考えなければならない。
・大義とは絶対のものである。成果が得られなければ、努力を倍にしなければならない。しかし、経済性にも係わる問題であれば、資源配分を考えることができる。資源は成果の上がるところに投入すべきであり、成果の上がらない活動を続けることはできない。
・非営利組織は成果の有無にかかわらず理想を追求する傾向がある。とくに理事会において見られる傾向である。
・しかし、たとえ大義であろうとも成果はあげた方がよい。非営利組織といえども、寄付者、顧客、有給・無給のスタッフに対し、資源は成果のあがるところへ投入する責任がある。
・非営利組織とは人を変えるためのチェンジ・エージェントである。その成果は人の変化、行動、環境、ビジョン、健康、希望、能力と可能性の変化となって現れる。
・非営利組織は貢献という見地から、常により高次元の目標を設定しなければならない。そうでなければ、得られる成果は急速に小さくなる。

第2章「してはならないこと」「しなければならないこと」
●してはならないこと
・非営利組織にも「してはならないこと」「しなければならないこと」があり、これを守れなければ成果は上がらない。
・非営利組織は内部志向になりがち。大義にコミットし、正しいことを行っていると信じるがゆえに組織自体を目的と錯覚する。
・それは単なる官僚主義であり、ミッションに貢献するかを考えず、内規に合っているかを考えるようになる。結果、成果は損なわれビジョンも貢献も失われる。
事例:ある病院での看護師不足対策
中途退職を減らすため、居心地をよくしたが不満を増大させただけだった。別の病院では看護師に「成果は何か?」と問うた。看護師は「患者の世話」と答え「やらされていることは雑用と事務ばかり」と続けた。そこで各フロアに事務員を一人配置した。看護師は患者に集中し、志気は高まった。離職も減り、余裕さえ生まれた。人件費を下げつつ、給与水準をあげた。
・非営利組織は、あらゆる政策、決定、行動において「ミッションの実現にプラスになるか」を考えなければならない。すべてを成果からスタートし、インサイド・アウトではなくアウトサイド・インで考えること。

・意思決定においては反対意見が不可欠。もちろん争いは不要である。それは多くの場合、組織構造の改革の必要を現す。成長が早すぎた為、構造が不適切になった。責任の所在が不明になった。その為の非難の応酬と見るべき。
事例:寝たきり老人に食事を運ぶボランティア
食事を運ぶことがボランティアの仕事だったが、そのうちに介護や親族との連絡、手続きの代行やリハビリ受診と様々なサービスを引き受けるようになった。しかし組織は食事の運搬しか考えていなかったので、車両の使用や、帰着時間について争いが増えた。
それは組織構造の陳腐化、システム不調の証左であり、全体を見直すべき時であった。組織構造が活動実態に合わなければ、構造を変えなければならない。
・不作法を許してはならない。動くものが接触すれば、摩擦が起こるのが自然の法則。礼儀とはこの摩擦を緩和するための潤滑剤である。大義は礼儀を不要にしない。不作法は人の神経を逆なでし消えることのない傷を残す。礼儀はすべてを良い方向に変える。

●しなければならないこと
・組織構造を階層ではなく、情報とコミュニケーションを中心に組み立てる。非営利組織では組織内の全員が情報に関わる責任を果たさなければならない。
・全員が二つのこと考えること。
①自分が仕事をするためには、いかなる情報を、誰から、いつ、いかにして手に入れなければならないか。
②他人が仕事をするためには、いかなる情報を、自分から、いつ、いかに渡すか。
・以前は情報そのものがなかったが、階層が多かった。現在は膨大な情報を手にしており、組織構造をフラット化することができる。これは進歩である。
・マネジメント階層は中継器にすぎない。情報連鎖において中継器がメッセージを半減させ、雑音を倍増させる。
・情報に関しては組織内のあらゆるものが責任を負い、データの洪水に対処する。上方に向けてのコミュニケーションに責任を負わなければならない。
・情報型組織においては、全員が上司と同僚に情報を与え、教育する責任を負う。そして全員が自らを理解してもらう責任を負う。自分が負うべき貢献と成果についての責任を考え抜き、書き留めること。そして、これらが、上下左右に理解されるようにすること。
・それが相互信頼の為の唯一の方法。組織は信頼を必要とする。信頼とは相手に何を期待できるかを知っている事である。それは相互理解であり、愛することでも尊敬しあうことでもない。お互いがお互いについて予見が可能であることである。
・これは多くのボランティア、命令権の及ばない人が多い非営利組織において特に重要である。

●権限移譲のルール
・非営利組織では全員が同一の大義に報じていると考えており、信頼がなければ容易に裏切られた感じを持つ。したがって責任を明らかにする必要がある。自らを理解してもらい、同僚を教育する責任を重視しなければならない。
・権限の委譲を意味あるものにするには簡単なルールが必要。委譲した権限の内容、目標、期限を明確にしなければならない。委譲した者と委譲された者の間に期待と責任についての理解、委譲した側からのフォローが必要。
・権限を委譲された者の側には、予期せぬことはすべて報告する義務がある。自分一人で処理できると考えてはならない。

●基準の設定
・貢献と理解という二つの責任を果たすには具体的な基準が必要である。基準は高く設定する必要があり、緩めてはならない。基準を低くしてスタートすればやがて高くなることは決してない。
・「ゆっくり」と「低い」は意味が違う。新人に新しい仕事をやらせるにはゆっくりで良い。間違いもある。しかし、基準は高くしておかなければならない。
事例:老教師
習字の見本を壁に貼り、見本のように書けといった。そのように書けるものなど居なかったし、一生かけるようにならなかったものが殆んどだった。しかし、だらしのない字が自慢できるものではないことは分かった。
・中央が全体を統括しているが、実質的には支部の連合体である非営利組織の場合は明確な基準が特に必要である。カトリック教会、アメリカ心臓協会、赤十字、ボーイスカウト、ガールスカウト、病院チェーン、州立大学コンソーシアムなど。
・基準は共通でなければならない。支部は自治権を持ち、独自に意思決定を行う。この共通性と自立性を同時に可能とするのが基準の高さである。
・連合体では、中央による基準のコントロールが不可欠。これこそ中央にとって最も難しい仕事である。支部が中央に従うのは中央の持つスキルのゆえではなく、基準ゆえである。
・中央のトップが支部を訪れる必要がある。中央の組織で働く者は、「自分たちの仕事は全体の為の基準を設定しつつ、支部に奉仕すること。彼らが実際の仕事をし、自分らはボスではない、彼らのよりどころである」と言えなければならない。
・支部に働く者は「我々が組織を代表する。我々が何をいかに行うかは、全体の行動として見られる」と言えなければならない。
・基準は高く、目標は野心的でなければならない。しかし達成可能でなければならない。少なくとも、相応の能力のある者には達成できるものでなければならない。

●人を活かす
・非営利組織は人の配置にベストを尽くさなければならない。それぞれが強みを発揮できるように配置する。そうして初めて成果を要求することができる。
・組織全体の目標、ビジョン、期待、基準を上げるにはスターを活用すること。仕事のできるものに脚光を当て、教師役に起用しプライドを持たせる。
・支部の会合では成果をあげた方法について話してもらう。これはセールス部隊全員と本人にとってもインパクトがあり、これ以上誇らしい認められ方は無い。
・自らの仕事ぶりは自ら評価できなければならない。評価は上司の仕事でもあるが、目標と基準さえ明らかならば、評価は可能である。
・評価は常に突出して成果のあがったものに基づいて行う事。できなかったことに基づいて行ってはならない。人が何事かを成し遂げるのは、すでに持っている強みによるものである。強みを成果に結びつけ、弱みを意味のないものにすることが組織の役割である。組織の価値はこれにより定まる。
・非営利組織の幹部は頻繁に外に出なければならない。組織の内部に成果はなく、コストしかない。人は容易に内部に没入し、外部の現実から遊離する。
事例:ある大病院
会計係や技師までもが、年に一週間ほど看護師の助手として働く。二年に一度仮名で入院する。「医師が一人前になるには病気になれ」という古い箴言がある。
・人を長期にわたりスタッフ部門に配置せず、現場とローテーションさせなければならない。数年ごとに将校を部隊に戻すことは、昔からの軍の知恵である。

第三章 成果をあげるための意思決定
●何のための決定か
・非営利組織のトップマネジメントは意思決定にそれほど時間を使っていない。殆んどは会議、面談、情報収集に使っている。全てが集約され、組織の命運を決めるのが意思決定である。
・のべつまくなしに意思決定を行う者は成果をあげられない。成果をあげる者はさほど多くの決定は行わない。重要な決定に集中する。
・意思決定においても最も重要なのは「何のための決定か」を考えることである。見えたとおりの問題であることは稀で、問題と思ったものは現象にすぎない。
事例:アメリカのガールスカウト
1970年頃、ガールスカウトの地域協議会のいくつかが人口構成の急変に気づいた。それまでは白人だけの地域で、ガールスカウトも白人の女の子のだけだった。黒人、ヒスパニック、アジア系がガールスカウトを欲しがっていたが、資金が必要だった。意思決定は「いかに資金を用意するか」という問題に追われ、人種別のガールスカウトをつくることが白人からの支援を引き出すことに繋がると考えた。しかし、一人が「何のための決定か。我々のミッションは寄付金を集めることか。良い社会を作ることか」と発言した。
問題はミッションに関わることが明らかになり、いかに財務的リスクがあろうとも人種別のガールスカウトなど作ってはならないというものだった。女の子はいずれもアメリカの女の子だった。あらゆるコミュニティが異論なくスカウトの拡大を決定した。
事例:大学
予算難の為に社会人学生に人気のある講座を中止しなければならなくなった。問題は財務にあると思われ、大学を解体しかねない論争が始まった。理事の一人が「問題提起が間違っている。問題は社会人の継続教育に力を入れるかどうかということではないか」と発言した。問題は予算ではなく、アメリカの高等教育の進むべき道と大学の役割であることが明らかになった。社会人の継続教育に力を入れるのならば講座を削ることはできない。募金をあつめるしかなかった。

●意思決定のリスク
・意思決定にはリスクが伴う。優れた意思決定には時間と思考が必要とされる。だからこそ余計な決定はしてはならない。些細なことに時間を使ってはならない。
・問題は機会とリスクに関係する。検討は、リスクからではなく機会から始めるべきで「うまくいったら何を意味することになるか」を考え、そのあとリスクを考える。
・リスクには三種類ある。
①失敗しても小さな害ですみ、元に戻せる負えるリスク。
②失敗したら深刻な害をもたらし、元に戻せないリスク。
③失敗すれば害は大きいが負わざるを得ないリスク。
事例:ブルックリンの病院
1950年頃、ニューヨーク・ブルックリンは白人労働者の住宅地から黒人のスラムへと変貌した。地域の病院はベッド稼働率が12%まで下がり、医師と患者は出て行き経済的になりたたなくなった。しかしコミュニティは病院を必要としていた。意思決定の結果は病院を閉鎖せず、資金を集めようとした。大失敗ともなりうる決定だが、病院がミッションを果たすには負わざるをえないリスクだった。

●真摯な不同意
・フランクリン・D・ルーズベルトをはじめとする一流の意思決定者はシンプルなルールを持っている。重要なことで最初から同意が得られている場合には、あえて意思決定はしない、というルールである。全員が考える時間を持てるように、決定を先延ばしした。
・重要な意思決定はリスクを伴う。当然意見の対立があるはずである。最初から全員が賛成という事は誰も何も考えてきていないことを意味する。何についての意思決定であるかを知るためにも、反対意見が必要である。
・1920年頃、アメリカの政治学者メアリー・パーカー・フォレットは意見の違いがあるときには誰が正しいか考えてはならない、何が正しいのかさえ考えてはならないとした。全員の答えが正しいと考えるべきであるとした。ただし、全員が違う問題と現実を見ている。
・いずれも正しいと前提し、それぞれの意見はいかなる問題に答えようとしているのか考えれば、全容が見えてくる。そして、対立意見を統合することができる。反対意見は理解と敬意をもたらすものとして扱う事。
・決定を間違うと組織に大きな害を与え、元に戻せないという場合には感情的になりやすい。そのような時こそ意見の対立を建設的にとらえ、相互理解と敬意の鍵として利用すること。
・意見の対立を、問題に対する共通認識までもっていくことができれば、連帯感と責任感が生まれるのは容易である。信頼が生まれるには、あらゆる反対意見が公にされ、真摯な不同意として受け止められなければならない。
・非営利組織では全員が大義に報じているがゆえに対立が起きやすい。しかし意見の対立とはよき信念とよき信念の対立である。不信や不和をもたらしてはならない。意見の対立はすべて公にし、真剣に検討しなければならない。

●意見の対立を利用する
・あらゆる組織には敬意を払われる反体制派の存在が必要。変化が必要になったときは、進んで変化を支持することのできる者が必要となる。それは「いろいろな選択肢がある」と言うものではなく、常に「いま正しい方法はどれか」と考える者である。
・意見の対立には些細な争いを吹き飛ばす効果があり、皆が本当の問題に取り組むようになる。争いの多くは表に出しただけで消え、深刻な問題でないことがわかる。
事例:美術館
美術館の理事会が喧嘩のようになり、年配者がどちらも正しいと指摘するまで激論が続いた。一方は大美術館を夢見ており、大増設を考えていた。もう一方は最高傑作だけを集めた美術館を目指していた。しかし、両者の考えている事が理解され対立は解消した。どちらの方向に行くべきかはやがて決められる。だが、その日の議題とは関係のない事だった。突然平和がやってきて調和が行き渡った。

・争いを無くすには意見の対立を利用する。反対意見を求めるならば、意見を聞いてもらえるという確信を得られる。同時に反対の者が何処にいて、何に反対しているかが分かる。そして、多くの場合、反対者が受け入れるような調整を行うことができる。
・反対者も意思決定の論拠を理解できる。全面的に納得できなくても、主張を通した者が悪者でないことを理解する。意見が違っただけと考えることができる。
・争いをなくすには、敬意を持たれている最も声高な対立者を二人選び、別室で調整してもらう、という方法もある。
・論点を一つ一つ潰していくという方法もある。やがて、本質的には一致しており、対立点が重要でないことが明らかになる。
・これらの方法は何ら新しいものではない。旧約聖書にも例は多く、共通の基盤を見つけるという方法は、長老が部族の一体性の保持に使用していた。
・争いの種を無くすことはできないが、二義的なものにすることはできる。その為の最高の方法が意見の対立を建設的に使うことである。

●決定が意図に終わる四つの原因
・意思決定とは行動へのコミットである、しかし多くの決定は立派な意図に終わっている。その原因は4つある。
①決定を行ってから売り込む。売り込めた時は陳腐化してる。日本では決定の前に実行を組み込む。決定の影響や実行に関わる全ての者に意見を求める。このプロセスは恐ろしく遅く見えるが、決定が行われると売り込む必要がなく、全員が決定の意味を知り、動き始めている。
②テスト段階を飛ばしている。直ちに新しい政策やサービスを全面的に実行に移そうとするからである。組織の全員を一挙に変えようとしてはならない。新しい事は三か所でテストしたい。企業ではテストの段階をとばせば失敗することが明らかにされている。社会的プロジェクトやサービスにも当てはまることを知らなければならない。
事例:理学療法の普及
1950年頃、アメリカの病院に理学療法を普及させようとした人たちは、ほとんどの病院で無視された。そのような病院は相手にせず、関心を示した三か所の病院(大学附属病院、労災病院、地域の病院)でテストした。活動をはじめて5年に近づくころにはアメリカ中の病院が理学療法を導入したがった。しかもその頃には理学療法の中身自体が大幅に改善されていた。リハビリにはカウンセラーや家族の協力が重要な役割を果たすことが明らかになった。これは理学療法の開発者たちには思いもよらぬことだった。

③担当者を決めていない。仕事のプラン、目標、期限について、誰かが責任を持たなければならない。決定に実を結ばせるのは人である。
④誰が何をするのか考え抜いていない。決定の結果を実行すべき人たちにいかにして決定の内容を理解させるか、いかなるトレーニングが必要か、いかなる道具が必要かを考えておかなければならない。
・意思決定とは現在の資源を不確かな未来に投ずることである。したがって間違っている可能性が高い。少なくとも何らかの調整が必要になる。
・決定はいつでも撤回できるようにしておくこと。その為には二つのことが必要であり、責任追及に時間をとられないようにしておくこと。①代替案を用意する。②撤回の責任者を決めておく。
・非営利組織の最大の弱みは無謬性への強い確信。企業ではいくらでも間違いがあることを知っているが、非営利組織ではなぜか間違いが許されない。何かがうまくいかなくなると「誰の責任か」と問われる。そうではなく、「誰が撤回し、誰がいかに立て直すか」と聞かなければならない。

第5章 成果が評価基準 まとめとしてのアクションポイント
●成果のあるところに資源を投入する
・あらゆる組織にとって成果こそが判定基準である。非営利組織はすべての人と社会を変えることを目的とする。しかるに成果こそ、非営利組織にとって最も扱い難い難題である。
・企業と非営利組織の違いは多くない。しかし最も重要な違いが成果である。企業の成果は財務上の収支だけではないが、成果が具体的で数値化できることは間違いない。
・非営利組織にはそのような数値は無い。そのうえ成果を軽視する傾向がある。「大義に報じている」「神の仕事をしている」「人の人生をより良いものにしている」したがって仕事そのものが成果である、というがそれでは良い仕事はできない。
・企業が成果のありえないところで資源を浪費すれば、失うのは自社の資金である。ところが非営利組織では失うのは人の金である。寄付金の使途を説明できなければならない。金は成果のあるところに投入しなければならない。よき意図だけでは転落の道をたどる。
・非営利組織にとっては「成果は何か」という問いに答えることはきわめて難しい。しかし応えなければならない。アルコール中毒者の社会復帰者数や犯罪者更生率等、測定できるものもある。いずれも定量的である。
・成果は一種類ではない。直ちに得られる成果もあれば長期的な成果もある。いかなる成果があるかを正確に把握することは難しい。しかし「事態は改善しているか」「成果があるところに資源を投じているか」と問わなければならない。

●成果を明らかにする
・成果は組織の内部ではなく、外部にある。救世軍の成果はアルコール中毒者、飢えた人などに現れ、教師の成果は生徒に現れる。
・ミッションからスタートしなければならない。組織として人として何をもって憶えられたいか。ミッションは今日を超越したものであり、今日を導き、今日を教えてくれるものである。ミッションを失った瞬間、我々は迷い、資源を浪費する。ミッションさえ明らかならば目標を設定して進むことができる。
・非営利組織は成果を明らかにして初めて目標を設計することができる。そうして活動の正しさやニーズへの対応を判定することができる。何より優れた人材に見合う成果を上げているかを考える事ができる。
・その上で、次に大切なこととして、組織の立ち位置や、改善や廃棄を考える事ができる。
・非営利組織は活動分野ごとに成果を定義しなければならない。主な活動分野を一つ一つ精査する必要がある。

●成果に責任をもつ
・大義を奉ずる非営利組織には、組織の中の人に成果をあげてもらい、成長してもらうという課題が存在する。こうして自己実現が行われ、組織としての成果が実現される。
・成果は強みのある分野に集中することによってあげられる。ミッションが組織の強みにあっているかどうか。あわなければ手放す勇気が必要である。
・良き意図、政策、意思決定はすべて行動に転換させなければならない。「これがミッションである」というだけでは不十分で、方法、期限、成果の責任者を定義しなければならない。
・非営利組織に働くあらゆる者が何度も何度も繰り返すべき究極の問いは「自分はいかなる成果について責任をもつべきか、この組織はいかなる成果に責任をもつべきか、自分とこの組織は何をもって憶えられたいか」である。