現代マーケティング論

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学生No.16115012:北村貴寿

第11章 チャネル関係の構築

1 チャネル関係の構築とは

  • 企業間関係とチャネル管理

チャネル管理:小売業者や卸売業者の販売活動を管理する事。消費者の購買行動に影響を与える事で製品差別化を形成することができる。選択された市場セグメントの選考に対応するような小売業者の販売活動を確保する事は市場細分化戦略において重要。

チャネル管理の必須条件:メーカーと流通業者との企業間関係を管理可能な状態にする事。企業間関係の構築に密接に関わる。

  • 直営店チャネルの難しさ

・直営店であれは組織としての指揮系統を用いる事で管理が可能になるが、問題点がある。

問題①:資本の固定化

一度に多くの店舗を開設したり、逆に多数を閉鎖したりすることが難しい。柔軟なチャネル戦略を制限する。→直営店の代わりに資本的に独立した流通業者を利用すれば状況に応じてチャネルの拡大・縮小が可能。

問題②:販売力の無い店舗になる危険性

単一メーカーの商品のみでは品揃え形成が限定され、消費者が製品の比較、探索が出来ない。顧客誘引力が低下する恐れがある。(ブランド力の強いメーカーを除く)

  • 中間的な形態としてのチャネル管理

・直営店チャネルは制約が大きいために資本的に独立した流通業者を利用。

メリット:柔軟にチャネルを開設・撤廃。多様なメーカーの製品を取りそろえ、効率的に販売。

デメリット:命令や指示でコントロールできない。

・チャネル管理ができる関係:メーカーから独立した流通業者と取引しながら、あたかも直営店のようにメーカーのマーケティング目的に沿った活動を流通業者から引き出せるような関係

→流通業者の「活動」についての取引を重層的に行っている状態。

 

2 チャネル管理の目的

  • チャネル管理と製品差別化

メーカーが流通業者を統制(コントロール)する基本的目標:チャネルを通じた製品差別化。2つのタイプが含まれる。

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  • 品揃え形成活動の統制

・商業とマーケティングの対立: メーカーは製品差別化をめぐる競争から、自社に有利な品揃え形成を流通業者に求めるが、流通業者は自律的な品揃え形成によって多数の消費者を吸引しようとし、両者の利害対立が発生する。

  • 流通業者の販促・サービス活動の統制

メーカーは、流通業者の販促・サービス活動を自社のマーケティング戦略と連動させ、製品差別化を形成し、消費者に非選択的な選考を持たせようとする。

・小売業者の製品差別化の貢献

①小売り業者のイメージ、店頭での販促・陳列状況。製品配達や保障・修理のアフターフォロー。

②店頭での実物情報・販促情報。店員が行う製品説明(詳細な特徴や広告では伝えにくい内容)。

・小売業者の自主的な判断はメーカーの意図する製品差別化を侵害する危険性がある。

・販促情報コスト節約に基づく低価格販売を追求する小売業者は、他の業者をも同様な行動へ誘引し、製品差別化を侵害する。メーカーは協力的でない業者に製品が流れないようにしなければならない。

  • フリーライドの統制

・フリーライド(ただ乗り):メーカーが小売業者に提供する資源(店舗設備・販促用資材・サービス活動技術・ノウハウ等)は他メーカーの販促にも利用できるものがある。競合するメーカーは、他社から既に提供された資源を利用しながら低価格を実現しようとする。小売り業者はあるメーカーの資源を利用しながら他メーカーが提供する低価格な製品を販売する事が有利な選択となる。

・メーカーはフリーライドを防止する為に競合製品の取り扱いを制限しようとする。その為に販促資源等を提供するので、小売業者の品揃え形成活動が統制されることになる。フリーライド行為を統制するチャネル管理は製品差別化を支える条件になる。

  • 小売業者間での競争行為の統制

・メーカーは小売業者の低価格販売な等の競争行為をチャネル管理の為に統制する事がある。

・小売業者は統制に従えば高い利益率を期待できるので統制に従う。

・小売業者の自主的な調整は、業者数が多いため制限できない。メーカーが製品供給の停止などの措置をもって統制する。

・すべての競争行為を統制する事は、小売業者の戦略や立場が異なるため難しい。抜け駆け的に低価格を設定すれば短期的に利益があがる。また、低価格販売店という消費者にとっては好ましいイメージも構築できる。

・メーカーは抜け駆けによって発生する小売業者の価格競争を統制する事は難しくなる。卸売業者の数を絞り込み、小売業者の仕入れ先を一本化することで監視と供給の統制を行うようになる。

columu⑨再販売価格維持制度

メーカーによる小売業者間の競争制限の一つ。独禁法では原則禁止。言論の自由や文化保護という観点から書籍、雑誌、新聞、CD等は適用除外。

 

3 パワー関係の形成

  • パワー関係

・二者間の関係において、一方が他方の行動を統制する能力があるという関係の状態。独立した企業間においては①依存関係に基づくもの②パワー資源に基づくもの、があり多くの場合両タイプが併用される。さらに後者によるパワー関係の形成には、②-1金銭・資材等の誘引の提供によるもの、②-2競争制限によるものに区分される。

  • 依存関係によるパワー形成

・パワー関係が形成される大きな要因の一つは取引依存度。依存度は①取引の重要度が大きい②取引相手に代替が少ない、ほど大きくなる。相手から依存されるほど、相手への依存が小さくなる。

・図11-1は依存関係を取引額で考えた図

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・メーカーが大手量販店のチャネルを有効に管理できない理由

品揃えが豊富なのでT/B(仕入依存)が小さく、販売シェアが大きいのでT/S(販売依存)が大きい。

・依存関係に影響する取引額以外の条件

メーカーが消費者に対して強いブランド・ロイヤリティを形成すれば、小売業者に対するパワー関係が築かれる。他方、小売業者が顧客への特別な選好(立地・サービス・店舗デザイン・品揃え等)を得ている場合、メーカーは小売業者への依存関係が形成される。

  • パワー資源によるパワー形成

・メーカーが依存関係に基づくパワー関係だけで取引相手を統制するには限界がある。

①仕入依存度を変えるためには製品市場シェアを高めるという困難な課題。

②パワー関係のばらつき。すべての取引相手に同じ統制が必要になるが、相手数が多く困難。

・パワー資源:パワー関係を形成しようとする相手に経済的メリットがあるパワー資源を提供して、その見返りとして相手の行動を引き起させるような資源。

  • リベート

・パワー資源としてリベート(経済的報酬)がある。数量リベートや販促リベート等多様な種類がある。リベートは次のメリットにより価格引き下げよりも利用されやすい。

①特定の流通業者に限定して差別的な待遇を与える事ができる。価格の引き下げよりも様々な条件を設定することができ、事後的に提供できるため優遇を隠しやすい。

②価格よりも柔軟に運用できる。価格は単純な為、変更への抵抗が大きく硬直的。

・リベートのデメリット

①リベートを原資にした価格競争行為を刺激することがある。

②基準が複雑でわかりにくい。事後的に調整することがデータ処理の妨げになる。

③反復的に提供されれば、慣行や既得権益として理解されてしまい効果が弱まる。

  • 物資や情報によるパワー資源

・行動特定よる販促リベートは監視コストがかかるため期待した効果に結び付きにくい。代替えとして、相手にとって価値のあるパワー資源を提供する場合がある。

・パンフレット、見本、陳列ケース等の販促資材は小売業者にとっては販促コストの軽減に繋がり、メーカーにとっては製品販促に繋がる。

・店舗経営指導や販売員教育は小売業者の利益に繋がり、販促活動を誘導する。

  • 競争制限によるパワー資源

・競争制限とは、販売地域を制限するテリトリー制度や、販売価格を制限する制度のように流通業者間での競争行為を制限する事。

・すべての小売業者を制限すれば価格競争を避けられるので小売業者にとってもメリットになるが、多大なコストがかかる。実行できれば強力なパワー資源となる。

 

4 信頼関係の構築

  • 信頼関係とは

・信頼関係とは取引においての相手の期待を裏切らない状態が継続している関係。チャネルにおいては2つの信頼性①情報の信頼性②行為の信頼性、が重要。

・売り手と買い手双方の長期的な志向と社会的な結びつきがもたらされる。双方は本来利害が対立する関係であるが、短期的な利害を超えた長期的な貸し借りが成立し、相手の期待を裏切ることが抑制される。

・信頼関係がなければ、毎回の取引は独立して、1回ごとに短期的で経済的な判断が行われ、相手がだれかは重要ではない。しかし、将来の不測の事態への対応や逐一監視できない行動が含まれる場合は有利な取引とは言えない。

  • チャネル管理おける信頼関係の重要性

・チャンネル管理においては、以下のような問題を解決する必要があるため信頼性が必要になる。

①取引費用の問題:相手を信用できなければ、取引における情報収集や契約履行の監視など、取引費用が大きくなりやすい。

②小売業者との情報共有:メーカーは詳細な消費者のニーズ情報を必要とするが、信頼関係がなければ、お互いのニーズが分からない。

③製品差別化ができない:短期的な取引では、投入した資源が無駄になる事を恐れて、設備投資や技術講習に消極的になる。メーカーも積極的な支援が行えない。

  • 信頼関係の構築

・上記の問題を解決する為に、長期的で社会的な結びつきのある信頼関係が必要。信頼関係が形成されれば機会主義的な行動が抑圧され、取引費用の負担軽減になる。

・信頼関係が構築できれば情報共有に積極的になり、上記の①②③の問題が解決される。

・信頼関係には、合理性や打算を超えるイメージがあるが、チャネル管理においては明確な経済的メリットが得られる。

5 系列店制度の展開

  • 日本の系列店制度

メーカーによるチャネル統制の典型。卸売業者や小売業者との間に、パワー関係・信頼関係を形成し、垂直統合する事なく、メーカー直営のように販売やサービスの協力を確保する仕組み。

・多数の中小小売店で形成される。

①規模の経済が作用せず広域商圏が形成できない為 ②パワー関係を形成しやすい。

・統制内容

①品揃え形成において特定メーカーのシェアが高いものとなる。メーカーは製品市場シェアを確保し、フリーライドされにくくなる。

②メーカーのマーケティング政策に沿った活動で製品差別化が達成される。

③系列店同士の競争行為が統制されている。乱売を回避し利益を確保している。

・販社制度:特定メーカー製品だけを販売するメーカー系列の卸売事業所。販売地域が限定されるが、地域内で独占販売を行う。小売り段階のチャネル管理を推進する役割を担う。

  • 系列店制度の弱体化

近年では消費者行動と量販店販売比率の変化により、系列店制度が弱体化している。

・消費者行動の変化

①製品知識の普及により系列店のアドバイスよりも、量販店に行き自分で製品比較するようになった。

②配達は物流業者、修理はメーカーに分業され、系列店のサービスの重要性が薄れた。

  • 量販店販売比率の増加

量販店とは、大量仕入れ大量販売による規模の経済を追求し、セルフサービス等の効率的な販売方法を採用することで低価格販売をする小売業者。家電量販店、ドラッグストア、スーパーマーケットチェーン等がある。

・パワー関係形成の障害。

メーカーは販売依存度が上がり、量販店は仕入依存度が下がるのでパワー関係が形成しにくい。不利な立場を覆そうと、パワー資源(リベート・販促資材等)を多く提供しようとするが中小小売業者のようなパワー関係形成は難しい。

・メーカー統制の障害。

①品揃え形成:豊富な品揃えで消費者を吸引するため、特定メーカーの製品取扱比率を上げない。メーカーのフルライン戦略やブランド戦略は採用されない。

②コスト引き下げ:低価格販売の為、充実したアフターサービスを行わない。消費者は小売業者で情報を入手し、量販店で購入するという傾向が生まれ、小売業者も情報提供を行わなくなる危険性がある。

③低価格販売競争:量販店は低価格販売戦略を取るため、価格競争に積極的。メーカーは小売業者の競争行為も統制できなくなる。

・重大なジレンマ

系列店制度の形成過程では、小規模小売業者を育成し、市場シェア確保を達成しようとしてきたが、近年は量販店の販売力が伸び、シェアを取りやすくなっている。系列化を維持するか、量販店の販売力を利用するかジレンマが発生している。

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