本日、ここに、令和4年3月定例県議会を招集いたしましたところ、議員の皆様にはご出席を賜り、厚く御礼を申し上げます。また、所信を申し述べる機会をいただきましたことを光栄に存じております。
私は、さきの知事選挙において、県民の皆様の温かいご理解とご支援を賜り、長崎県知事として県政のかじ取りを担わせていただくこととなりました。
貴重な一票を投じ、県政運営を託していただいたお一人おひとりの様々な思いを重く受け止め、皆様に対し深く感謝を申し上げます。その期待の大きさと責任の重さに身が引き締まる思いであり、今後の長崎県勢の発展に向けて、全身全霊を尽くす決意であります。
また、県民の代表である県議会議員の皆様と理事者が、それぞれの責任を果たしながら、長崎県の今後のあり方を真摯に議論し、車の両輪となって県政を推進してまいりたいと考えておりますので、よろしくお願い申し上げます。
私は、五島市で生まれ、県立長崎北高等学校を卒業後、アメリカのカリフォルニア大学デービス校へ留学いたしました。その後、医師・医学博士として臨床や研究に携わり、令和2年度以降の厚生労働省の勤務においては、地域における医療提供体制の整備のほか、最前線で新型コロナウイルス感染症対策関連業務に従事いたしました。
医師としての経験を通して、公助による支援の必要性を痛感したことで、政治の道を志すことを決意し、「ふるさと長崎県」の発展のために人生をかけて力を尽くしたいとの想いから、さきの知事選挙に出馬したところであります。
今回の選挙期間中、可能な限り県内各地へ足を運び、様々な現場の方々から直接お話をお伺いいたしました。地域の大変厳しい現状を目の当たりにする一方で、たくさんの激励と期待の声をいただいたところであります。
こうした地域の実状や県民の皆様の思いを胸に刻み、一緒に手を携えながら、美しく豊かな自然や独自の文化・歴史など多くの魅力と、将来を担うこども達といった宝物に溢れている「ふるさと長崎県」を、何としても明るく元気な県にしたいと考えております。
そして、県民の全世代の方々が、安心・継続して、豊かで温かい暮らしを営むことが出来る社会の構築を目指し、新しい長崎県を県民の皆様と一緒につくりあげられるよう、強い覚悟を持って、日々、全力で邁進してまいります。
国に目を向けますと、少子高齢化に伴う人口減少や労働人口不足、気候変動問題をはじめ、様々な課題が顕在化しております。さらに、新型コロナウイルス感染症の感染拡大の長期化や原油価格の急騰等により、社会経済活動や国民生活に大きな影響が生じるなど、厳しい状況が続いているものと認識しております。
一方で、DXやグリーン化、グローバル化の流れは加速・拡大しており、目まぐるしい変革の時代を迎えております。
本県においても、特定複合観光施設(IR)の誘致や本年秋の九州新幹線西九州ルートの開業等の様々なプロジェクトが展開され、産業面でも、航空機やロボット・IoT等の新たな基幹産業化にかかる動きが見られるなど、100年に一度とも言うべき、大きな変化が生じております。
こうした県内外の流れや動きを的確に捉え、本県が直面している最大の課題である人口減少について、社会減・自然減の両面から施策の充実・強化を図り、何としてもこれを克服し、地方創生を成し遂げ、本県の輝かしい未来に結び付けられるよう、先頭に立って切り拓いていくことが私の使命であると考えております。
私は、中村前知事が築いてこられた県政運営の方向性について、継続すべきものは継承することとしております。
一方、若輩での就任となりますので、行政経験の足らざる部分等は努力を重ねつつ、行動力を活かして、スピード感と新たな視点・発想を吹き込み、県勢をさらに活性化・発展させるため、全力を尽くしてまいります。
今後、希望と誇りに満ちた長崎県づくりを実現するためには、山積する諸課題の打破に向け、その一つひとつに丁寧に向き合いながら、県議会や市町、関係団体、民間企業の皆様と思いや力を重ね合わせて一緒に取り組んでいくことが、何よりも大切であると考えております。
県議会をはじめ県民の皆様のご理解とご協力を賜りますよう、お願い申し上げます。
県政運営の個別の事項については、こうした基本姿勢に基づき、各方面・各分野の関係者の皆様のご意見等も十分に伺いながら検討を重ねてまいります。
この際、特に当面する課題について、所信を申し述べたいと存じます。
・新型コロナウイルス感染症対策
新型コロナウイルス感染症について、本県では、これまでに約3万人の新規感染者が確認されており、100人を超える方がお亡くなりになりました。
何よりもまず、お亡くなりになられた方々並びにご遺族の皆様に深く哀悼の意を表しますとともに、感染された方々に心からお見舞いを申し上げます。
また、医療・福祉関係者の方々におかれましては、県民の皆様の生命と健康を守るために多大なるご尽力をいただいていることに対し、厚くお礼を申し上げます。
本県においては、本年1月以降、感染力が非常に強いとされるオミクロン株の流行により、感染が爆発的に拡大いたしました。1月21日から長崎市及び佐世保市にまん延防止等重点措置が適用された以降も、新規感染者数が連日過去最多を更新するなど、一時、県内全域で第6波の感染拡大に歯止めがかからない状況が続きました。
こうしたことから、1月26日以降、まん延防止等重点措置区域が県内全域に拡大され、県民の皆様への不要不急の外出自粛や、飲食店等に対する営業時間短縮の要請など、同措置に基づく集中的な対策が講じられたところであります。
県民の皆様のご協力により、病床使用率や新規感染者数が改善したこと等を踏まえ、3月6日をもって、国において、本県へのまん延防止等重点措置の適用終了が決定されました。また、本県でも、3月7日から県内全域の感染段階をレベル2-Ⅰ、警戒警報に引き下げるとともに、飲食店に対する営業時間短縮の要請等を終了することといたしました。
その際、県民の皆様には、感染の再拡大を招かないよう、まん延防止等重点措置地域等の感染リスクが高い地域との往来を極力控えていただくことや、会食はできるだけ少人数で行っていただくことなど、感染防止対策の継続をお願いいたしました。
また、経済活動の再開に向けた施策の検討や外来医療体制の更なる強化、小児ワクチン接種の推進等について、ご説明したところであります。
今後においては、私の厚生労働省での経験や医師としての知見を活かしつつ、県医師会をはじめとする関係団体や市町など関係機関との連携を強化しながら、県民の皆様の生命や健康、暮らしを守るため、医療提供体制の維持や感染拡大防止対策にしっかりと取り組んでまいります。
一方、新型コロナウイルスの完全な収束は現実的ではなく、これからはウイルスとの共生を前提に、保健・医療・福祉機能と社会経済活動との両立を図っていく必要があると考えております。
そのため、地域ごとの医療ひっ迫状況等を見極めながら、国や市町とも緊密に連携のうえ、感染防止対策を講じつつ、社会経済活動の回復・拡大に注力してまいります。
これらの取組を遂行できるよう、本議会に提案しております令和4年度当初予算においては、国の財源等も最大限に活用のうえ、「感染症の予防・拡大防止と県民生活の安全・安心確保対策」及び「県内の社会経済活動の回復・拡大対策」の柱に基づいて、切れ目のない継続的な執行が求められる事業について計上しております。
引き続き、関係者のご意見等を伺いながら検討を重ね、効果的な施策の推進に努めてまいりたいと考えております。
・感染症の予防・拡大防止と県民生活の安全・安心確保対策
第6波のような未曽有の感染拡大の中にあっては、保健・医療提供体制の強化・重点化を図ることが重要であります。
本県においても、保健所から新規感染者へ確実に連絡を取り、症状や生活状況等の把握を行ったうえで、直ちに入院・治療を含めた必要な支援を実施することとしております。
また、1月13日以降、保健所体制を通常の第一段階から、地域の感染状況に応じ、順次、最大の第三段階に引き上げ、自宅療養者に対する毎日の健康観察を徹底しております。そして、体調が悪化傾向にある際には、自宅療養サポート医の電話診療による判断に基づいて、受入れ医療機関と調整して速やかな搬送を行うほか、宿泊療養施設内においても臨時の医療施設を開設し、必要に応じて、経口薬及び中和抗体薬の投与を実施できる体制づくりを行っております。
さらに、検査体制については、検査可能件数の更なる拡充に努めるほか、引き続き、医療機関や高齢者施設、障害者施設等における新規入院・入所者に加え、分娩前の妊婦の方々や医療従事者養成校等で実習を行う学生のPCR等検査費用を支援してまいります。また、感染拡大時に県の要請に応じて受検する検査の無料化に必要な支援措置を講じることとしております。
一方、新型コロナウイルスワクチンについては、市町において、県民の皆様への3回目の追加接種が実施されております。
県でも、2月5日に大規模接種センターを長崎市及び佐世保市に設置のうえ、高齢者施設や児童福祉施設の職員等に対する優先接種を実施するなど、接種の更なる加速化を図っているところであります。
このワクチンについては、オミクロン株に対しても有効であることが確認されていることから、県民の皆様の接種に対するご理解とご協力を賜りたいと存じます。
このほか、生活困窮者の自立支援体制の整備や、自殺予防対策の強化、誹謗中傷等に関する相談窓口や弁護士による支援についても、引き続き、積極的に対応することとしております。
今後とも、感染症の後遺症にかかる医療体制の構築や、新たな変異株に備えて、ICTの活用により保健行政の効率化を図るなど、より県民の皆様の生命や健康、暮らしを守るための感染予防・拡大防止対策に取り組んでまいります。
・県内の社会経済活動の回復・拡大対策
本県においては、長期化する感染拡大により、各産業分野で様々な影響が生じ、厳しい経済・雇用情勢が続いているものと認識しております。
今後は、社会経済活動の継続に必要な支援措置を講じるとともに、雇用環境の整備を図ることが重要であります。
そのため、中小企業に対する緊急資金繰り支援資金による融資や、国の雇用調整助成金及び産業雇用安定助成金への上乗せ助成のほか、離職を余儀なくされた方々を雇用する中小企業者への支援や県の直接雇用による雇用機会の創出など、緊急的な対策を実施してまいります。
また、本県の観光キャンペーン「ふるさとで“心呼吸”の旅」については、まん延防止等重点措置の解除後の感染状況等を総合的に判断し、本日から、まずは対象を県民の皆様に限定したうえで、再開したところであり、県内観光関連産業の回復を図ってまいりたいと考えております。
さらに、ウィズコロナ・アフターコロナを見据えて、県内事業者のDX・デジタル化の促進やICT教育環境の整備、データ連携基盤の構築等に注力してまいります。
なお、1月以降の感染急拡大やまん延防止等重点措置の適用などに伴い、飲食店以外においても大きな経済的影響が生じていることから、県としても、国の事業復活支援金の活用を積極的にサポートするとともに、必要な県独自の支援策を検討しているところであり、県内の社会経済活動の回復・拡大にかかる対策を迅速かつ的確に講じてまいりたいと存じます。
・県民との対話と行動力の発揮
今後の県政運営や施策展開にあたっては、私自らが行動力を発揮し、県民の皆様との対話や県内各種団体との協議を積極的に実施することが重要であると考えております。
こうしたことから、県民の皆様と膝を突き合わせた「県民車座集会」を定期的に開催するとともに、県民の皆様及び各種団体からの要望や県政に対するご提案・改善点等を直接お伺いしながら、県政運営や諸課題の解決に迅速かつ的確に反映してまいります。
また、本県は特色ある地場産業や豊富な文化・歴史・観光資源を有しており、ウィズコロナ・アフターコロナを見据え、私自身が先頭に立ち、本県のPR隊長として、その魅力を県外・海外に売り込んでまいります。
特に、デジタル分野を念頭に置いた民間人材の積極的な活用と併せて、女性が活躍できるダイバーシティ社会を目指し、女性の意見を今後の施策にしっかりと反映させるため、女性副知事登用の実現について、検討してまいります。
・子育て支援施策と教育環境の充実・強化
子育て世代の皆様が安心して妊娠・出産・子育て出来るよう、関連支援施策を強化するとともに、本県の将来を担う子供達の教育環境の充実を図ることは、私が目標に掲げた本県の合計特殊出生率2に寄与することに加え、若い世代を本県に呼び込むうえでも重要であると認識しております。
こうしたことから、出産育児一時金の増額やこどもの医療費助成の拡充、子育て関係物資の支給のほか、保育関係職員の処遇改善のための支援措置や不妊治療における支援策について、財源の確保や市町との協議などの課題の整理を含め、検討してまいりたいと考えております。
また、県外流出が続いている若者の郷土愛を育むための施策を推進するとともに、ICT等を活用しながら、地理的な課題を有する離島地域における教育環境の整備を促進するほか、私自身の海外大学留学経験を踏まえ、国際交流や世界を知るための教育の充実を図るなど、グローバル教育の実施を検討してまいります。
さらに、世界でも有数のBSL-4を活用し、グローバルな学術都市を目指すとともに、半導体やAIなどのハイテク産業育成のため、大学等との連携を強化し、世界を目指す高度人材を養成してまいります。
加えて、学校等における不登校対策やいじめ撲滅については、現場の声や専門家の知見を積極的に取り入れるほか、医療的ケア児に対する支援の充実や、障害のある方とない方がともに学ぶインクルーシブ教育の推進等により、児童・生徒一人ひとりに寄り添う施策にもしっかりと取り組んでまいりたいと考えております。
・医療・福祉・介護の充実と人材確保
県民の皆様が、これからも「ふるさと長崎県」において、安全・安心な暮らしを続けていただくためには、医療・福祉・介護の関連施策の充実・強化とともに、こうした分野で活躍する人材の育成・確保を図る必要があると考えております。
そのため、私自身の医師としての専門的な知識を活かしながら、医師不足が生じている離島・県北地域等における医療提供体制の整備を促進するほか、ICT等を活用しつつ、遠隔診療・カルテ情報の共有化等の最先端の医療技術の導入や地域包括ケアシステムの更なる推進に取り組んでまいります。
また、本県の健康寿命を延伸させるため、高齢者が元気に活躍できるような施策を推進してまいります。
さらに、介護・看護関係職員等の人材の確保や潜在的な人材の復職にかかる支援に加え、賃金向上など処遇改善に必要な支援を行うほか、国に対しては介護報酬改定を強く求めてまいりたいと考えております。
・地場産業の振興
力強い本県の産業振興を実現するためには、県内各地域の特色ある様々な産業の育成・強化を図り、県民所得の向上にしっかりと結び付けていくことが重要であると考えております。
そのため、本県の基幹産業である農林水産業において、生産者の意欲ある挑戦を支援するための体制を構築してまいります。
また、県外・海外への販路拡大に向け、私自身のトップセールスにより、本県の農林水産物の魅力を積極的にPRしてまいります。
さらに、DX・デジタル化の進展等を踏まえ、地場中小企業者の活性化対策の推進や、産学官で連携しながら、新卒学生等の県内就職の更なる促進に努めてまいりたいと考えております。
このほか、本県におけるスタートアップ創出を加速させるため、大胆な支援について検討するほか、本県へ移住者を呼び込むためのUIターン施策をさらに強化することとしております。
こうした中、世界的に、あらゆる産業基盤に必要な半導体の需要の拡大が見込まれていることから、国においても、半導体確保に国家事業として取り組む方針が示されております。
本県においては、半導体製造で世界屈指のシェアを誇るソニーセミコンダクタマニュファクチァリング株式会社やSUMCO TECHXIV株式会社が、規模拡大に向けた設備投資を発表されたほか、九州各地で投資増強にかかる動きが相次いでおり、今後も一層の拡大が見込まれているところであります。
県としては、こうした需要をしっかりと取り込み、産業振興に繋げていくため、去る2月10日、県、関係市町、県内大学及び関連企業等の産学官で構成する「ながさき半導体ネットワーク」を新たに設立したところであります。
今後とも、立地環境の整備や人材の育成・確保など、具体的な課題について協議を重ね、半導体関連産業の更なる集積を目指してまいります。
・交通ネットワークの整備
本県の産業振興や地域活性化、救急搬送など県民の皆様の安全・安心で快適な生活を確保するためには、社会の基盤となる交通ネットワークの整備促進を図らなければならないと考えております。
そのため、高規格道路や県民生活に密着した道路のほか、インバウンドの拡大を見据えた長崎港松が枝岸壁の2バース化など、港湾の整備を推進してまいります。
こうした中、九州横断自動車道の長崎インターチェンジから長崎芒塚インターチェンジ間の4車線化工事については、今月17日に完成する予定となっております。
また、県が整備を進めておりました都市計画道路池田沖田線の竹松工区2キロメートルは、今月26日に開通予定であり、島原道路の諫早市長野町から栗面町間2.7キロメートルについても、5月末の完成を予定しております。
こうした道路網の整備促進により、走行性・定時性・安全性の確保が図られ、交通の円滑化・混雑緩和や更なる生活環境の改善、救急搬送の支援等に大きく寄与するものと期待しているところであります。
このほか、離島の人流・物流を支える離島航路や航空路の維持・確保に必要な支援を行ってまいります。
さらに、ウィズコロナ・ポストコロナやIR誘致等による来訪客の増加を見据え、長崎空港の24時間化や国際化等、必要な機能拡充を実現するため、国への働きかけを強化するなど、積極的に取り組んでまいりたいと考えております。
・離島の振興
本県は、県土の約4割を離島地域が占めるなど、全国一の離島県であります。県全体の活力再生を図るためには、離島地域の振興を県政の重要課題に位置付け、国・関係市町とも緊密に連携のうえ、しっかりと施策を講じることが重要であると考えております。
そのため、有人国境離島法に基づく国の政策等を最大限に活用しながら、雇用の創出や観光客の誘致、輸送コストの低廉化等に必要な支援を実施してまいります。
また、離島住民の方々が安心・継続して生活できるよう、医師会等と連携を図りつつ、保健・医療・福祉等の提供体制の整備に取り組んでまいります。
さらに、離島地域への移住者・定住者の更なる増加を目指し、私自らが魅力の発信に努め、島外から学生を受け入れる離島留学を促進するなど、若者が離島と触れ合う機会の創出・拡大に注力してまいりたいと考えております。
こうした中、令和5年3月末で期限を迎える離島振興法の改正・延長については、去る2月10日、全国の離島関係4団体主催の「離島振興法改正・延長実現総決起大会」において、多くの関係者の出席のもと、特別決議が全会一致で採択され、政党や関係国会議員等に対する要望活動が実施されたところであります。
また、各政党でも様々な議論が行われており、2月18日には、自由民主党の離島振興特別委員会において、「新しい離島振興法の基本方策(大綱)」が示され、具体的な施策として、医療・介護サービスの充実のほか、離島のデジタル化に向けた情報通信基盤の整備や再生可能エネルギーの活用、小規模離島への配慮など、本県から要望・提案した数多くの項目が盛り込まれております。
現在、国においては、今期の通常国会への法案提出に向けて与野党間で意見調整等が進められており、県としても、県議会及び関係市町と一体となって、新たな離島振興法の早期成立が図られるよう、あらゆる機会を捉え、強く働きかけてまいりたいと考えております。
・長崎県版デジタル社会の実現
社会経済を取り巻く環境において、これまでにないスピードでDX・デジタル化の流れが加速しております。また、新型コロナウイルス感染症の影響により、人と人との接触を避けるための取組が求められていることに加え、本県の地理的な課題から、長崎県独自のデジタル社会の実現を目指していかなければならないと考えております。
こうしたことから、県民サービスの向上や県庁内業務の効率化・コスト削減を図るため、各種行政手続きや内部事務のDX・デジタル化をさらに促進するとともに、本県の特性や地域課題に応じ、先進的かつ特徴的な事例の創出を進めてまいります。
併せて、民間人材の積極的な登用や様々な研修・教育等を通して、人材の育成・確保に取り組むこととしております。
・にぎわいの創出
本県が直面している最大の課題である人口減少を克服し、地方創生を前進させるためには、私自身が先頭に立って、交流人口の拡大を図り、にぎわいと活力に満ちた長崎県づくりを推進することが大切であると認識しております。
こうしたことから、商店街をはじめ各地域や市町と連携しつつ、観光客の誘客など交流人口を増加・拡大させるための施策を展開するほか、本県で育まれてきた文化的・歴史的・地理的な魅力や地域資源について、県外・海外に向け積極的に発信してまいります。
特に、県北地域においては、IR誘致とも連動しながら、新たなまちづくりや活性化に向けて、地元市町等と十分な連携を図りつつ、交通インフラの整備のほか、地域を支える地場産業等の有機的な繋がりの創出や防衛関連も担う県内造船サプライチェーンの維持・強化のための関連企業への支援などの対策を推進し、県全体の振興に結び付けてまいりたいと考えております。
また、令和7年度に開催予定の国民文化祭に向けて、新型コロナウイルス感染症で大きな影響を受け、継続が困難な状況にある伝統文化等に対する支援を検討してまいります。
・防災・減災と国土強靭化への対応
近年においては、地震や台風、豪雨等の自然災害が激甚化・頻発化していることから、県民の皆様の生命や財産、安全・安心な暮らしを守るために、ハード及びソフトの両面から積極的な防災・減災対策を講じる必要があると考えております。
そのため、国の「防災・減災、国土強靭化のための5か年加速化対策」に対応する公共事業費を確保しながら、必要な施設の整備や更新を推進してまいります。
また、老朽化が進んでいる公共施設等について、先端技術を活用した点検や予防保全型の補修を行うなど、効率的な維持管理を促進してまいりたいと考えております。
さらに、避難所における感染症対策のほか、高齢者や障害者、性的少数者等の避難支援体制の整備を進めてまいります。
加えて、災害の発生直後からDMATやDPATが、より速やかに活動できるような体制構築を図るほか、大規模災害に備え、九州・山口各県と締結している相互の応援協定等に基づき、引き続き、他県との緊密な連携に努めてまいります。
一方、石木ダムについては、川棚川の洪水被害を軽減するとともに、佐世保市の安定した水源を確保するために必要な事業であると認識しております。
地域住民の皆様のご理解とご協力をいただいたうえで、円滑に推進していくことが最善の方策であることから、3月10日に現地を訪問し、ご挨拶をさせていただいたところであります。
引き続き、川原地区にお住いの皆様との関係を構築することが出来るよう、まずは、お話をお聞きかせいただきたいと考えており、事業の推進に向けて、佐世保市及び川棚町と一体となって、努力を重ねてまいります。
・本県の取組の世界への発信
ウクライナ情勢が緊迫感を増す中、本県は、原爆の惨禍を受けた県として、三たび、その惨禍を繰り返さないとの強い決意のもと、核兵器廃絶を目指す使命があると考えております。
そのため、地域や世代にかかわらず県民の皆様への平和教育を実施するとともに、こうした取組を世界に発信し、次世代に伝えてまいります。
また、国に対し、長崎の被爆体験者の救済と併せて、核兵器禁止条約締約国会議へのオブザーバー参加等を強く要請してまいります。
さらに、SDGsの理念に基づき、自然保護をはじめとする環境問題への対応や動物の殺処分ゼロのための対策についても、しっかりと取り組んでまいりたいと考えております。
・行財政改革の推進・知事退職金の辞退
本県が、これからの時代を見据えた行財政運営を持続的かつ安定的に行うためには、人口減少や少子高齢化のほか、DX・デジタル化の進展等の流れを捉え、新たな時代に合った行財政改革を推進する必要があると考えております。
こうしたことから、中長期的な財政見通しを策定し、事業の選択と集中や部局間の連携を図りつつ、人材や財源を重点的に投入し、より効率的な県庁組織のあり方を柔軟に検討することで、施策効果を迅速かつ最大限に発現できるよう注力してまいります。
また、県有財産については、検証を行ったうえで、利活用に向けたアイディアの公募を検討するなど、さらなる有効活用に努めてまいります。
さらに、県庁職員の意欲や可能性向上のための研修機会等の拡充に加え、様々な分野・地域における人材交流の更なる促進を図ってまいりたいと考えております。
そして、コロナ禍で県民の皆様に多大なご負担とご苦労をお掛けすることに鑑み、知事として寄り添う姿勢をお示しするため、退職金を辞退したいと考えております。
併せて、知事及び副知事の給与の一部についても減額したいと考えております。
私は、これからの4年間、県民の皆様のお一人おひとりの思いにしっかりと寄り添いながら、一つひとつの課題に真摯に向き合い、情熱を持って解決に努力し、「皆さんと一緒につくる新しい長崎県づくり」を推進していく覚悟であります。
県議会並びに県民の皆様のご理解とご支援を賜りますよう、お願い申し上げます。
それでは、次に、その他の主な施策や懸案事項などについてご報告を申し上げます。
・特定複合観光施設(IR)区域整備の推進
IR区域の整備については、長崎県のみならず九州全体の活性化・発展を図るうえで重要なプロジェクトであり、何としても国の区域認定を勝ち取らなければならないと考えております。
本県では、11月定例会において区域整備計画素案をお示しし、ご議論をいただくとともに、昨年12月21日から本年1月17日までの間、計画素案に対する意見公募を実施いたしました。
こうした県議会でのご議論や県民の皆様からのご意見等を踏まえつつ、設置運営事業予定者とともに検討を重ね、今般、計画案として、とりまとめたところであります。
計画案においては、IR区域に整備する各施設の機能・規模に加え、これらの施設の整備や運営を行う特定目的会社(SPC)の出資者のほか、具体的な資金計画等についても盛り込んでおります。
そのうえで、今月28日、佐世保市において第1回公聴会を、さらに30日には、長崎市を主会場、各振興局をサテライト会場とする第2回公聴会を開催することとしております。また、今月10日から参加者の募集を開始するなど、IR整備法の規定に基づき、本年4月が期限となっている区域認定申請に向けて、最終的な手続きにかかる準備を進める予定であります。
今後においては、本定例会における計画案に関するご議論や立地市町村である佐世保市との法定協議等も踏まえながら、改めて最終計画案を議案として提案のうえ、ご審議を賜りたいと考えております。
引き続き、本県のみならず、九州の観光並びに地域経済の活性化に寄与し、我が国の発展にも貢献する九州・長崎IRの実現を目指して、県議会や県民の皆様のご意見を伺いながら、しっかりと取り組んでまいります。
・九州新幹線西九州ルートの整備促進
西九州新幹線(長崎~武雄温泉間)については、先般、本年9月23日に開業することが発表されております。
本県においては、その効果を最大限に高めるとともに、県下全域に波及・拡大させるため、官民一体となって、県民の皆様の気運醸成や来県者に対するおもてなしの実践等の準備を進めているところであります。
去る1月9日には、新幹線車両「かもめ」が川棚港へ到着し、車両の陸揚げや大村車両基地への搬送が行われました。
また、今月19日・20日の両日、同車両基地の見学会が開催されるほか、5月の連休明けには試験運転も開始される予定となっております。
さらに、県の西九州新幹線開業準備実行委員会や沿線自治体において、県内各地域を周遊していただくための対策や様々な開業イベント等が検討されております。JR九州では、長崎駅高架下の商業施設である「長崎街道かもめ市場」が今月18日に開業するなど、本県へお越しになる多くの皆様をお迎えするための諸準備が進められております。
今後とも、新幹線の開業に向けて、関係団体や市町等とさらに連携を図りながら、アクションプランの推進に注力し、万全の体制で受入れができるよう、準備等を加速してまいります。
一方、新幹線開業に伴い上下分離されるJR長崎本線(肥前山口~諫早間)については、1月31日に、「一般社団 法人佐賀・長崎鉄道管理センター」が、鉄道施設の所有や維持・管理の主体となる第三種鉄道事業者として、国土交通大臣から許可されたところであります。
県としては、引き続き、上下分離区間の輸送の安全性の確保を図るため、鉄道施設の適切な維持管理に努めるとともに、関係自治体とも連携のうえ、沿線地域の活性化や振興等に注力してまいります。
なお、新鳥栖~武雄温泉間については、全線フル規格により整備が図られることで、利便性の向上による交流・定住人口の増加や民間投資の促進をはじめ、地域の活性化に大きな効果をもたらすものであると考えております。
そのため、私自身が佐賀県を訪問し、積極的な対話を行うなど、早急に取り組んでまいります。
・県庁舎の跡地活用
県庁舎の跡地活用については、県議会でのご議論や県民の皆様からのご意見等を踏まえつつ、今後の利活用を図るため、基本構想案のとりまとめを進めているところであります。
県庁舎跡地は、様々な歴史の変遷を有し、海外等との交流により新たな価値を創造・発信してきた、長崎発祥の礎となった場所であり、まちなかに立地する貴重な県民の財産であると考えております。
そのため、基本構想案においても、この地の歴史や特性を念頭に置きながら、隣接する県警本部跡地を含め、賑わいの創出に繋がる広場のほか、歴史や世界遺産など本県の魅力を紹介する情報発信機能とともに、将来の発展に資する交流やイノベーションを推進する機能等を効果的に配置することを検討しているところであります。
県としては、先般実施したパブリックコメントや関係者の皆様からのご提案等を踏まえ、さらに精査を行い、周辺地域はもとより本県全域に活力をもたらすような活用策となるよう、基本構想のとりまとめに取り組んでまいります。
・「黒い雨」訴訟を踏まえた審査の指針改正に対する本県の対応
去る11月30日以降、国では、「黒い雨」被爆者健康手帳交付請求等訴訟にかかる広島高等裁判所の判決を踏まえ、被爆者援護法に基づく審査の指針改正に向け、本県を含めた4県市との協議を実施されてきたところであります。
この協議の中で、長崎県・長崎市としては、放射性降下物を帯びた灰や雨を浴びた本県の被爆体験者についても、広島の原告と同じような事情にあるものとして認定対象とするよう訴えてまいりました。
こうした中、昨年末に厚生労働省から提示された指針改正の骨子においては、長崎を対象外とする考えが示されております。
原子爆弾による健康被害の特殊性にかんがみ、国の責任において援護対策を講じるとの被爆者援護法の理念は、同じ被爆地である広島と長崎に等しく適用されるべきであります。
それにも関わらず、今回の骨子は広島と長崎を分断するものであり、本県としては、受け入れられない旨を回答したところであります。
また、長崎市とも連携しながら、厚生労働省に対し、長崎で黒い雨等を浴びた方々も広島の黒い雨体験者と同様に認定対象とすることのほか、第一種健康診断特例区域の検証については、国が設置している検討会の中で広島・長崎両地域の分析等を進め、早急に結論を出していただくことを要請したいと考えております。
併せて、長崎の黒い雨等にかかる客観的資料が乏しいとの国からのご指摘に対応するため、2月8日には、気象研究や放射線疫学分野など学術的・専門的な見地から検証を行う本県独自の専門家会議を立ち上げ、第1回目の会議を開催したところであります。
今後とも、長崎市と連携のうえ、本県の被爆体験者に対して救済の道を開いていただくとともに、被爆者援護施策の更なる充実・強化が図られるよう、国への要望を重ねてまいりたいと考えております。
・陸上自衛隊水陸機動団3個目の連隊の本県への配備
陸上自衛隊水陸機動団に新編される3個目の連隊については、本県が、九州の西端に位置し多くの国境離島を有する地理的環境にあることや県内各地域が自衛隊と友好な関係を築いていること等の優位性を訴えながら、国に対し、本県への配備を強く要望してまいりました。
こうした結果、去る2月4日、防衛省から、本県大村市の竹松駐屯地への配備を決定した旨の連絡を受けたところであります。
県としては、この3個目の連隊の配備により、本県や南西諸島の有事の際における即応性等がさらに高まることに加え、既に佐世保市に所在する団本部と2個連隊、さらには海上自衛隊佐世保地方総監部との連携が図られるものと考えております。
また、隊員とそのご家族を含めた定住人口の増加のほか、関連施設の整備による経済波及効果など、地域の活性化においても大きな効果がもたらされるものと期待しております。
本県は、自衛隊から災害派遣をはじめ献身的なご支援をいただいていることから、引き続き、地域の安全・安心や地域コミュニティの構築に向けて、一層の連携強化を図ってまいりたいと考えております。
・企業誘致の推進
去る12月22日、東京都に本社を置き、株式会社リクルートのグループ企業である株式会社ニジボックスが、長崎市への立地を決定されました。同社は、リクルートグループが手掛けるWebページシステムの企画・開発等をされており、本県において、3年間で16名を雇用して、システム開発を行うこととされております。
また、1月6日には、平成28年に佐世保市へ立地されたパーソルワークスデザイン株式会社が、業務拡大に伴いオフィスを拡張することを決定されました。同社は、3年間で新たに110名を雇用し、これまでと合わせ780名体制により、企業などから受託したITサポート業務や、経理事務、資格試験に関する事務処理業務等を行うこととされております。
さらに、1月31日には、東京都に本社を置き、鴻池運輸株式会社のグループ企業であるシャイン株式会社が、長崎市への立地を決定されました。同社は、3年間で60名を雇用し、紙伝票の電子化に関する業務を行うこととされております。
今後とも、雇用の拡大と地域経済の活性化を目指して、地元自治体や関係機関と連携しながら、企業誘致に積極的に取り組んでまいりたいと考えております。
・スポーツの振興
去る1月14日、我が国の体操界を長く牽引されてきた内村航平選手が引退を発表されました。
内村選手におかれては、世界一の美しい体操を追求した華麗な演技により、大きな重圧がかかる中、オリンピックや世界選手権をはじめ世界の大舞台で多くの金メダルを獲得されるなど「絶対王者」として活躍され、長崎県民はもとより国民の皆様に大きな勇気と感動を与えていただいたことから、「県民栄誉賞」及び「県民栄誉賞特別賞」を授与させていただいたところであります。
改めて、内村選手のこれまでのたゆまないご努力と多大なご功績に対して敬意を表しますとともに、今後の更なるご活躍を心からお祈り申し上げます。
本県は、体操競技のみならず、幅広いスポーツが盛んな地域であり、各界・各種目で優れた選手やアスリートを輩出してまいりました。
また、ラグビーフットボール競技では、県ラグビーフットボール協会を中心に、約1,700名の会員を有しながら、子ども向けのスクールを展開されている活動に代表されるように、青少年の育成において、スポーツが果たしている貢献は大きいものがあると考えております。
こうした中、昨年末以降に開催された各種全国大会等において、本県チームが素晴らしい活躍を見せてくれました。
まず、「第28回全国高等学校対抗ボウリング選手権大会」男子の部において、西海学園高校が準優勝し、「第69回全日本都道府県対抗剣道優勝大会」においては、本県男子チームが51年ぶりの3位入賞と健闘いたしました。
また、1月1日に群馬県で開催された「第66回全日本実業団対抗駅伝競走大会」では、三菱重工マラソン部が4位でゴールし、2年連続5度目の入賞を果たしました。
さらに、1月16日に京都府で開催された「第40回全国都道府県対抗女子駅伝」において、本県選抜チームが5位入賞いたしました。
各競技における本県勢の輝かしい活躍は、県民に大きな夢と感動を与えるものであり、選手並びに関係者の皆様のご健闘をたたえるとともに、引き続き、スポーツの振興と競技力の向上に努めてまいります。
一方、サッカーJ2リーグの2022シーズンが2月19日に開幕し、V・ファーレン長崎はホームに東京ヴェルディを迎え、新たなスタートを切りました。
昨シーズンはリーグ4位という順位で、悲願のJ1復帰は惜しくも叶いませんでしたが、今シーズンは昨シーズンから積み上げてきたチーム力により、リーグ優勝とJ1昇格という2つの目標の達成を期待しているところであります。
また、V・ファーレン長崎に次ぐ県内プロスポーツクラブである長崎ヴェルカは、現在、男子プロバスケットボールB3リーグの首位を快走しており、このままリーグ優勝と次シーズンのB2リーグへの昇格を目指して、さらに勝ち星を重ねられることを願っております。
県としても、県民応援フェアの開催等によりホームゲームを盛り上げるとともに、市町と連携して試合会場の使用にかかる支援を実施するなど、両チームを応援してまいります。
今後は、県議会をはじめ、市町や関係団体、県民の皆様と一体となって、国際的なスポーツ大会や試合の誘致に努め、スポーツの振興を通して、地域の活性化や青少年の育成等に結び付けてまいりたいと考えております。
・県立長崎図書館郷土資料センターの開館
県立長崎図書館の郷土資料部門を担う郷土資料センターについては、長崎市立山において整備を進めており、今月27日に開館いたします。
郷土資料センターでは、郷土の新聞・雑誌や長崎ゆかりの文学など約19万冊の地域資料を所蔵するとともに、ミライon図書館の資料の貸出や返却等ができる「ミライonサテライト」の機能を備えるほか、歴史的・文化的な価値を有する公文書のうち、現用されていない文書の閲覧等ができる「長崎県公文書コーナー」を設置することとしております。
今後とも、ミライon図書館とともに、市町立図書館や長崎歴史文化博物館等と連携を図りながら、ふるさと長崎の魅力を後世に伝え、本県の文化活動の更なる振興に寄与できるよう、取り組んでまいりたいと考えております。