群馬県渋川市 借上賃貸住宅事業
伊香保温泉が全国的に有名なんだそうです(失礼ながら知りませんでした)。
竹下内閣のふるさと創生1億円ってありましたよね。そのおカネで全市町村で温泉を掘ったそう。
懐かしの走り屋マンガ「イニシャルD」に出てくる藤原とうふ店があり、走り屋の観光スポットだったそうです。
面積は240平方キロ 人口は83,000人。
大村より1万人少ない人口が、2倍の面積に住んでいることになりますね。
ただ合併で広がった面積ですから山間部もあり、居住面積は大村と変わらず。
ほぼ似通ったサイズのまちです。
財政力は0.69、大村とそう変わりません。
一般会計341億
経常収支比率94.5%
実質公債費比率10.5%
年に700名ぐらい人口減少。高齢化率26.3%と進んでいます。
生活保護世帯303世帯、大村は1,016世帯
620戸の公営住宅があります。大村は1,500戸ですね。
視察目的・・・借上げ賃貸住宅事業により、住宅供給を充実させることで、中心市街地の定住者を増加させる。
特色・・・本事業は、平成8年度から中心市街地の空洞化に対応するために行われており、民間の賃貸住宅を市が一括で借り上げ、住宅に困窮する中堅所得者世帯(一般借り上げ)及び高齢者・障がい者・母子世帯に家賃の一部(一般借り上げ2割、高齢者等3割)を助成して貸し出しを行っている。所得基準の面では、低所得でも入居可能な高齢者や障がい者に、さらに配慮された住宅施策になっている。
課題・・・建物が老朽化する中、再契約に伴う家賃設定や空き室対策の問題が出てきている為、これらの問題に対しての改善や効率性の検討が必要になっている。
この事業は私が主張してきた
「公営住宅の建設を中止、既存の民間ストック住宅を借り上げて公営住宅とし民間力を活用する」
という政策とは少々毛色が異なります。
事業の目的は二つ。
中心市街地の定住化による活性化、公営住宅の入居条件にもれる中堅所得層の市民に対する住宅のフォロー。
この施策が始まったのは平成7年。まずは渋川市借上げ賃貸住宅条例を定めました。
そして民間からの建設の申し込みを受け付け開始。
既存の民間ストック住宅を借り上げて公営住宅とし活用する政策ではなく、まずは10年間借り上げるから、という約束で民間にアパートを建築してもらいます。
いわば市は初期投資なしに公営住宅を手に入れることができる、という訳ですね。
ただし、既存の公営住宅と収入制限が事なり、若干高めの中堅所得者層を対象としています。
公営住宅そのものを作る、という事ではなく、収入が若干高めで公営住宅に入れない層をフォローしている事業という事。市内に49戸が整備されています。
入居者募集、入退去手続き、家賃徴収も市が行います。滞納は1件。
中間層をフォローする政策ならば、民間業者とバッティングするのでは?と尋ねたところ当初はその様な声も出ていたが今は無い、とのこと。
当初の借り上げ期間は10年以内としていましたが、オーナーからの要望もあり、2回目の更新で5年、3回目5年、最長20年までの契約をするそう。
年齢や家庭の状況により通常家賃の2割、3割を公費より助成しています。
20年を超えると家賃補助はなくなりますが、オーナーは市からの助成分を値引きして、市民が支払う家賃は同額とし、引き続き居住してもらう、という方向だそうです。
空室になると家賃の50%を行政が支払います。オーナーは勿論、市にとっても負担になります。
オーナーが駐車場や共益費をサービスしたりする工夫もしているとのこと。
大村のように指定管理者制度はありません。
22年度では3300万が市からオーナーへ支払われ、2100万が入居者からの家賃収入。
実質の歳出は1100万ですが、この2分の1が国の社会整備補助金が入るそうです。
49戸の市営住宅の初期投資なしで年間維持費が600万という事ですね。
年間の公営住宅に係る経費が1戸約12万という事です。
最大のメリットは、
・初期投資なしで公営住宅が整備できる。
デメリットは
・契約の打ち切りの判断が難しい
・空室がでたり、入居して年数が経つと高齢者の家賃となり市の負担が増える
という説明でした。
中心市街地の定住化についてはこの政策の効果が上がっているとは言い難く、空洞化が進んでいるとのこと。
郊外型の店舗が増えて周辺の利便性が上がり、相対的に駅前周辺の生活環境は低下。
そして益々ドーナツ化が進む、という悪循環から抜け出せていないようです。
借り上げ住宅の老朽化、という事もあるようですが、家賃助成がされて安い賃料であるにも関わらず、11戸の空室が出ています。
対象地域は18町内と場所を限定していますが、実質6地域となっています。
そして、すでに新規建設の募集が打ち切られているという事でした。
この事業については、私の主張とは前提条件が異なります。
そもそも低所得者層が対象ではないし、公営住宅供給整備を減らしていくという趣旨ではありません。
中心市街地の活性化という目的とも合致しない。
ただ社会の経済状況によっても住宅困窮者の数は上下する筈です。
現在は生活保護世帯が増加の一途。大村市の公営住宅入居はかなりの高倍率です。
ただこれが景気が良くなればそれも少なくなるでしょう。
というか、そうしなければいけないんですが。
そう考えれば、住宅供給数のコントロールについては柔軟性を重視したほうが無駄が無いのでは。
更新や不足に対応し自前で整備して70年の建物(本町アパートの耐用年数)を抱えるよりも、民間ストックを活用し必要な時は供給数を拡大し、不要な時は絞って行く。
そんな柔軟な契約等に合わせてくれるかどうかは未知数ですが、民間オーナーも空家にしておくよりは良いでしょう。
住宅は人が住まないと痛みますからね。
そう考えれば、初期投資無しで新たな公営住宅を整備できる、という事例のエッセンスは活かすことができると思います。
更に市内に1000以上あると言われる空き家対策として考えれば、十分活用できるかもしれません。
赤城山が雄大でした。登ってみたいぞ。