大学院修論中間発表会

朝立ち@大村公園前。ご声援ありがとうございます。


集中豪雨の被災者の皆様に心からお見舞い申し上げます。

一日も早い復旧がなされますように…

 

長崎大学大学院の修論中間発表会が終わりました。

私の研究は定性的な分析がメインの論文。

なのに定量的な分析を生半可に盛り込んだのが反省点。

離職率を説明変数にしたクラスター別の相関分析が必要とのドクターコースの学兄よりご指摘。

ありがとうございます。

以下レジュメ。

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平成29年度博士前期課程中間報告会レジュメ

平成29年7月5日

長崎大学大学院経済学研究科

経営学修士コース マネジメント科目群

指導教員 林 徹 教授

16115012 北村貴寿

介護事業における魅力ある職場づくりの研究

~事業者トップの経営理念を中心に~

1.論文の構成(仮)

第1章 序論

第1節 わが国の高齢者介護をめぐる社会保障制度の変遷

第2節 介護サービス事業者を取り巻く情勢と動向

第3節 本研究の目的

第2章 先行研究

第1節 先行研究の検討

第2章 先行事例の紹介

第3章 事例研究

第1節 長崎県内の入所系サービス事業者に関するデータ

(1)介護職員の経験年数と離職率

(2)各データの相関

第2節 インタビュー

(1)社会福祉法人の事例

(2)医療法人の事例

(3)営利法人の事例

第4章 介護事業における魅力ある職場の条件

あとがき

 

2.論文構成の追加、修正

テーマ報告会で発表した構成に「第2章 先行研究」「第3章 事例研究」を追加した。第2章では、経営理念についての研究を紹介し、経営理念について定義する。第3章では長崎県内の入所系サービス事業者が公開しているデータを収集および分析し、介護職員の離職率や経験年数の実態をまとめる。ケース・スタディを「第2節 インタビュー」とし、職員の定着が為されている魅力ある職場の事業者トップと介護職員へのインタビューを行い魅力ある職場の条件を明らかにする。

 

3.テーマ報告会へのコメントの対応

  • 中西先生:インタビュイーに対するインタビュー側のバイアス処理。

…Mark Easterby-Smith, Richard Thorpe, Andy Lowe. (2009) Management Research(木村達也・宇田川元一・佐渡島沙織・松尾 睦訳『マネジメント・リサーチの方法』,白桃書房,2009年)をふまえてインタビュー内容を精査中。

  • 工藤先生・宍倉先生:賃金、ボーナス、福利厚生など、物的報酬に関する労働条件をコントロールすること。

…労使へ労働条件関係のインタビューにより調査する。県内介護職の平均賃金を調査済。

  • 高橋先生:リーダーシップの議論ではないか。理念の定義を明確に。

…林(2011)によれば、リーダーシップは階層とは無関係なものである。経営理念とは、「トップの考え方や信念が反映された、事業の活動方針の基礎となる基本的な考え方」であり階層が前提となる。先行研究をふまえて定義を明確にする。

 

4.本文について(一部)

第2章-第1節 先行研究の検討

坂本(2008)によれば、会社経営とは「五人に対する使命と責任」を果たすための活動である。その五人とは優先順に①社員とその家族の幸せ、②外注先・下請け企業の社員の幸せ、③顧客の幸せ、④地域社会の幸せ、⑤株主の幸せである。経営の失敗は経営者が五つの優先順位を勘違いしているからである。

最優先である①の社員とその家族については、所属する組織に対する満足度が高くなければ、顧客が満足するようなサービスや商品を生み出せない。②の外注先・下請け企業の社員については「社外社員」と定義し、納入コストダウンの強要など、下請けいじめをしていては発注者離れや廃業が加速し、発注者自身が困る。誰かの犠牲の上に成り立つ組織は正しくない。③の顧客については多くの経営学者や経営者からは顧客が第一なのではないか、と指摘を受けるが、顧客のニーズ、ウォンツを揺さぶる担い手は社員であり、社員こそが市場を創造する。社員満足度を高めれば、必然的に顧客満足度も高めることができる。④の地域社会については、会社は住民や自然まで含めた地域社会に貢献する必要があるという。顧客や社員、地域社会にとってなくてはならないような存在になること。寄付等の貢献ではなく日常的な活動が必要である。最後の⑤の株主については、①~④の満足度を高めれば必然的に発生する。また、株主配当といった現金的な見返りだけではなく、社員や顧客、地域社会から愛されている会社の株を保有することによって生まれる満足度がある。

また坂本(2008)は、経営で一番大切なのは会社を継続させることだという。成長や業績重視の経営ではなく、継続重視の経営を行うべきで、成長や業績は継続の為の手段に過ぎないという。そして、業績の良し悪しで人員整理を行う会社は長続きしない。不況を克服したり、好況を持続させることのできる唯一の経営資源は「人財」であるからだという。人財があればこそ、顧客が感動するような商品を創り続けることができる。何年も連続で増収増益を続けている会社をみれば、景気は与えられるものではなく、創るものだという。

坂本(2008)はそのような実例の一つとして、長野県の伊那食品工業株式会社をあげている。同社は昭和33年の創業以来48年間の増収増益を果たし、50年間一度の人員整理も行っていない。経営理念は「企業は社員の幸せを通して社会に貢献すること」である。実質的な創業者である会長の塚越寛(以下、「塚越」という)は生死をさまよった経験があり、弱者の視点に立った経営を実践している。社員のモチベーションや社員満足度を高め、前述の驚異的な経営成績を達成した。

塚越の最終学歴は中学校卒業である。高校生だった17歳のとき、当時は死の病であった結核を患い入院、高校を中退。闘病中は経営書や哲学書を読みふけった。3年間の闘病経て退院できたが、高校中退で病弱な若者を採用しようとする企業は、なかなか見つからなかった。当時の伊那は製材業が盛んであり、幸運にもある製材会社に職を得る。伊那食品工業(当時は伊那寒天工業)はその関連会社の一つであったが、経営不振にて銀行管理下にあった。当時21歳であった塚越は、闘病中に学んだ経営についての造詣を見込まれ、再建を任されることになる。 結核で生死をさまよった経験から、生きていること、働けること自体に喜びを感じて会社の誰よりも業務に精励した。また、弱者である社員の立場や心境を共有しながら、働く塚越のリーダーシップにより、社員のモチベーションは高まり、伊那寒天工業は増益に転じる。以後、48年間増収増益を達成した。

坂本(2008)は会社の原動力は経営者で決まる、とする。経営理念は事業の活動方針の基礎となる基本的な考え方であり、トップの考え方や信念が反映される。経営理念は、組織の文化や気風に多大な影響を与えるし、事業に対する思いや、使命感に現れる。経営者の生い立ちや、仕事に対する姿勢や決断を調査、研究することも経営理念の源泉を探るという意味で重要である。

 

第3章-第1節 長崎県内の入所系サービス事業者に関するデータ

本研究では事例研究に際して、厚生労働省の「介護情報サービス情報公表システム」にアクセスし、長崎県内の入所系サービス事業所「施設などで生活」に分類された4類型(介護老人福祉施設、介護老人保健施設、介護療養型医療施設、特定施設生活入所者介護)に登録されている270事業所のうち、事業主体が社会福祉法人(社会福祉協議会以外)、医療法人、営利法人及びNPOの259件を参照した。本研究は坂本(2008)が取り上げた伊那食品工業のように、職員が定着する魅力ある職場づくりを実現している介護事業の経営理念である。調査対象を選別する為に、参照したデータの中から職員の定着に関連する指標を抽出した。

 

表3-1:長崎県内の「施設などで生活」に区分される事業所数と事業主体

事業主体 登録数 事業主体 登録数
社会福祉法人(社協以外) 156 社会福祉法人(社協) 2
医療法人 85 診療所 3
営利法人 17 宗教法人 1
NPO 1 地方公共団体 5
小計 259 小計 11
合計 270

出典:厚生労働省「介護情報サービス公表システム」より筆者作成

 

表3-2:259事業所の入居定員と総従業員数および常勤介護職員数の分布。

入居定員 総従業員数 介護職員数(常勤)
最大値 200 146 76
中央値 50 44 18
最小値

出典:厚生労働省「介護情報サービス公表システム」より筆者作成

 

表3-3:入居定員、総従業員数、事業開始年、従業員経験5%以上、離職率(常勤)、

離職率(非常勤)の相関

出典:厚生労働省「介護情報サービス公表システム」より筆者作成

 

当然のことながら入居定員と総従業員には正の相関がみられる。また、事業開始年月日と従業員経験5年以上に緩やかな正の相関がみられる。他に強い相関はみられない。また、入居定員や総従業員数、事業開始年や従業員経験5年以上の割合といった指標は離職率との相関がみられない。

 

5.今後の研究計画

・7月~ 先行研究、インタビュー、本文の執筆

・9月~ 本文の執筆、最終報告会直前まで論文全体の改良

・11月 最終報告会

 

主要参考文献

CHENG ZHENGYUN(2016)「『組織均衡論』と低賃金労働者」長崎大学大学院

経済学研究科修士論文.

Hirschman, A. O. (1970) Exit, Voice, and Loyalty: Responses to Decline in Firms,

Organizations, and States, Cambridge, MA: Harvard University Press. (矢野修一訳『離脱・発言・忠誠―企業・組織・国家における衰退への反応』,ミネルヴァ書房,2005年)

Simon, H. A., D. W. Smithburg, and V. A. Thompson (1950) Public Administration,

New York: Alfred A. Knopf.

Mark Easterby-Smith, Richard Thorpe, Andy Lowe. (2009) Management Research

(木村達也・宇田川元一・佐渡島沙織・松尾 睦訳『マネジメント・リサーチの方法』,白桃書房,2009年)

坂本光司(2008)『日本でいちばん大切にしたい会社』あさ出版.

 

参照URL

厚生労働省「介護情報サービス公表システム」(2017.6.1アクセス)

http://www.kaigokensaku.mhlw.go.jp/

厚生労働省「介護保険制度の概要 介護保険とは」(2017. 4. 28アクセス)

http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/kaigo_koureisha/

gaiyo/index.html

厚生労働省「2025年に向けた介護人材にかかる需給推計(確定値)について」(2017. 4. 28アクセス)

http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000088998.html

㈱東京商工リサーチ「2017年1月11日発表資料2016年(1-12月)老人福祉・介護事業の倒産状況」(2017. 4. 28アクセス)

http://www.tsr-net.co.jp/news/analysis/20170111_01.html

みずほコーポレート銀行「みずほ産業調査Vol.39」(2017. 4. 28アクセス)

https://www.mizuhobank.co.jp/corporate/bizinfo/industry/sangyou/m1039.htm

 

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最終報告&修論審査への道のりは遥か彼方か。

頑張らねば…

 

 

 

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