総務省「業務効率化・生産性向上のためのオフィス改革」

公共施設整備調査特別委員会にて総務省行政管理局を訪れ、行政管理局管理官(業務・システム改革総括)柴沼雄一郎氏にご対応を頂き、業務効率化・生産性向上のためのオフィス改革について、行政管理局3フロア視察調査および質疑を行った。

総務省は平成27年1月から、業務効率化や生産性向上を目指して、行政情報システム企画課(電子政府担当)を皮切りにオフィス改革に取り組んだ。

第1弾として「電子政府担当」らしい先端的レイアウト=フリーアドレスを採用。個人デスクを廃止し、座席を流動化。チーム型テーブルを導入し、コミュニケーションの増加。また、電子モニター等で画面を共有する効率的な打ち合わせにより、意思決定の迅速化を図った。資料の電子化を推進し、テレワークに適した環境を構築、働く場所の多様化を推進した。テレワークの申請は簡略化され、前日に上司へ申し出るのみでOK。テレワーク勤務の開始、終了はメールの送受信により完了。現在テレワークは五割り増になった。

第2弾は平成28年3月、行政管理局6階においてオフィス改革を実施。このフロアは一般行政事務を担当しており、管理職席は残した上で、レイアウトの可変性を重視。直線的なデスク配置を採用した。第1弾の改革内容に加えて、資料やパーテーションに遮られていた環境を改善、見通しが確保されコミュニケーションの増加も見られたという。大型の個人ロッカーは廃止し、小型のロッカーとデスクの下に収まるキャビネットをそれぞれ一つまでとした。フリーアドレスを実現する為に、退庁時には電源を備えた小型ロッカーにノートPCを格納するルールとなっている。

第3弾は、平成29年3月に行政通則制度グループ(法令立案業務担当)のフロアにおいて行われた。このグループはペーパーが一定程度不可欠な業務であり、斬新さは見られないが、小型ロッカーの導入やパーテーションの廃止により、見通しが良いフロアとなっている。

これまで、行政事務は仕事の内容にもよるが「壁を作る」「見せない」「漏らさない」文化だったとのこと。これら一連のオフィス改革で風通しがよくなり、情報の共有化やコミュニケーションが増加、業務効率は向上したという。また、ペーパーレス化の推進の為に、コピー機はマイナンバーカードをかざさないと作動しない仕組みを導入。誰が・いつ・どれだけコピーを使用したか、というデータが生成されるので、コピーの使用に心理的ブレーキがかかったとのこと。個人の紙資料が8割削減されるとともに、カラープリント枚数が5割削減された。

オフィス改革が進んだのは、政治主導によるところが大きい。平成26年、政務三役(松本文明)からカナダでの事例視察を踏まえ、電子政府担当部局におけるICTを活用した取り組みの実践が指示された。また、安倍内閣の目指す「働き方改革」は公務部門でも課題となっており、総務大臣(高市早苗)がテレワークの推進を積極的に主導した。

オフィス改革のポイントは3点。第一に「意思決定プロセスの見直し」である。改革前は会議室確保が前提の紙資料を用いた会議スタイルで、①会議室の予約、②日程の連絡、③資料印刷、④会議開催、⑤資料修正、⑥資料配布、というプロセスが前提となっていたが、この改革により、予約不要の会議室+ペーパーレス+モニターでの会議が実現し、6つのプロセスが実質1つになった。

第二は「ペーパーレス化による業務の効率化」である。手書きの時代からOA化、そして電子化となり、印刷・資料組み・配布・修正といった業務時間が減り、企画・検討といった考える業務に人的・時間的資源を振り分けられるようになった。

最後は「情報共有の促進・文書管理の合理化」である。紙資料の整理を前提とした個人デスクでの作業だったものが、チーム型テーブルの導入+電子化された共有フォルダを利用することにより、必要な書類を取り出す所謂「名人芸」に頼っていた状況がなくなり、業務効率が向上。残業時間もオフィス改革前には平均60時間だったが、平均48時間と2割縮減された。

オフィス改革の推進エンジンは若手職員で構成される「オフィス改革伝道師」が担った。特に上司の指示を受けず、若手の自主的な企画、行動により推進された。オフィス改革啓発ポスターを作成、特設WEBページや自主製作の動画を配信[1]、啓発講演などを行ったという。総務省は他省庁に比べてICTインフラに恵まれていたことも幸いしたということだった。

コストは概算で1フロア約1000万円、費用対効果の詳細な検討はまだなされていないが、職員アンケートでは9割が「満足」と答え、7割が「業務がやりやすくなった」と回答している。企業や自治体の視察が増え、現時点で1,100人を超えた。また、この改革を参考に北九州市東京事務所が「ひまわりテラス」として市民や来庁者とのふれあい空間を確保したオフィス改革を行っている。

一連の改革で課題も浮上した。完全なオープンスペース化が実現したが、人事案件など業務内容によりクローズな会議室が必要になるとのこと。モニターを使った会議では、画面の大きさや設置場所にばらつきがあり、大規模な打ち合わせは場所を選ぶ。その為、参加人数に応じた会議室の使用ルールの必要性を感じている。チーム型テーブルの導入により、座席が固定されないため職員の顔と名前が一致しない、というケースも散見されるとのこと。また、資料の電子化ルールが明確化、徹底化されていないケースも見受けられ、メールサーバー受信容量が増えたため、不要なデータが蓄積される状況も発生しているという。

 

6.所見

総務省は、電子行政を所管していることもあり、霞が関ではICT導入のトップランナーである。各省庁は所謂縦割りであり、総務省のオフィス改革が全般に波及しているとはいいがたいとのこと。また、様々な業務の電子化を進めているが、あまりに巨大で大規模なシステムが多く、人事給与システムには10年以上かかっているとのこと。働き方改革は途に就いたばかり、というところだろうか。また、いくら電子化を進めても紙の「良さ」は代替できないものがあるという。数値がメインの資料作成にはダブルディスプレイを導入しているが、見落としが散見されるとのことだった。

以前、日本マイクロソフト本社を訪問、紙を全く使わず、時間と場所に縛られない「とがった」ワークスタイルを目の当たりにした。世界最先端のワークスタイルに物怖じしたが、公的機関が推進するオフィス改革には、どこか安心させられた。

大村市は50年、100年に一度の庁舎建て替えが目前に迫っている。今回視察した総務省のオフィス改革は、行政事務の効率化や企画立案力の強化を目指すために必要不可欠であろう。また、ICT等の技術は日進月歩である。長期的な視野に立った汎用性の高い業務環境の構築が求められる。庁舎建て替え計画についての議論を深める上で、有意義な視察であった。

 

[1] fb特設ページにて再生回数5500回を突破、以下URLはyoutube

 

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