栃木県佐野市「新庁舎建設について」

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佐野市は2005年に田沼町・葛生町と合併して誕生。人口12万、面積356k㎡、一般会計規模476億、財政力0.72。栃木県の南西部に位置し、日光例幣使街道の宿場町、また綿ちぢみや鋳物の産地として栄えた。市のキャッチコピーは「育み支え合うひとびと、水と緑と万葉の地に広がる交流拠点都市」市内には200軒以上のラーメン店があり「佐野ラーメン」[i]が有名である。

 

駅にはラーメン博物館が併設。
旧佐野市庁舎は合併に伴い、田沼町・葛生町と庁舎が3箇所に分散。行政効率が低く、加えて平成22年の耐震診断ではマグニチュード6で倒壊のおそれがある、という結果となり庁舎再整備は課題であった。しかし、相当な事業費も予想され財政的な観点からも優先順位はどちらかといえば低い位置付け、庁舎建設基金もゼロという状況であった。

しかし、東日本大震災の発災でその位置付けは最重要課題に昇格することになる。本庁舎議場棟が損壊したのである。

ゆるキャラは「さのまる」2013グランプリキャラ。

 

本庁舎の損壊により、議会・会計課・税3課の移転が必要になった。また、合併特例債の事業期限(合併から10年間)や消費税増税も予想されていた為、震災からわずか4年で完成と異例のスピード感をもって取り組んだ。

事業費は71.7億円。内訳は庁舎建設基金18.6億(2年間で捻出)、合併特例債37.3億、合併による地域振興基金8.9億、一般財源3.8億、国・県の補助1.2億、震災特別交付税8.9億。震災後の労務単価や資材高騰、消費税8%化などを考慮すれば、現在同じものを建設するとなると100億は超えるだろう、とのこと。建設用地については公園を含む市有地と県有地を追加取得しており、用地取得・移転費用等で約10億円が必要になったとのこと。

敷地面積は5,129㎡、建築面積2,771平米、延べ面積20,435㎡と、コンパクトな印象。

 

庁舎は7階建ての柱頭免震構造、地震の際は横方向に最大60cmスライドして揺れを納める。外観のデザインは50m×35mの正方形に近い建物。震災の影響もあるのか、安定したイメージになったとのこと。非常用発電装置の設置や、最上階にはヘリコプターのホバリングスペースが整備され、3階から中央部は採光の為に吹き抜け構造になっている。

駐車場は地下に76台、一階には市民活動スペースが設置されている。庁舎は市民のもの、という市長の意向によるもので、多目的スペースとして多くの市民が活用しており、最上階の7階にも市民向けスペースが設置され、19時まで解放されている。関東平野の夜景を楽しむことも出来るとか。

 

柱頭免震。解りにくいですが、基礎と建物が分離しています。
新しい建築だけあって「インテリジェントビル」[ii]としてユビキタス・ネットワーク[iii]化を図っている。随所がICT化されており、デジタルサイネージが多い。ペーパーレスの取り組みが定着しているのか、執務スペースには見かける書類が少なかった。

特に議場や議会機能については、タブレット配布は言うに及ばず。採決ボタンや、モニター、自動追尾カメラなど、議会機能の利便性や効率性が高い。

バリアフリー・ユニバーサルデザインは無論のこと、雨水利用システムや太陽光発電等、近年の公共建築物では常識となった機能は一通り備えられている。

 

建設候補地については、6箇所から検討している。市の課長級職員で構成される「新庁舎建設委員会」にて候補地を選定、公募市民や有識者で構成される政策審議会の承認を経て決定された。新庁舎に関するパブリックコメントは、800件ほど寄せられたとのこと。市民の関心の高さが伺えるが、団体系の運動もあったとのことだった。

震災を体験し、スピード感をもって整備しなければならない、というコンセンサスが取れていたせいだろうか。候補地同士の誘致合戦などは無く、新庁舎建設委員会が検討内容を随時議会に伝えながら、行政側が絞り込んでいった、という状況とのこと。その間実に半年未満である。反省点を挙げれば、計画策定をかなり急いだため、各課の執務における要望などが十分取り入れられなかった、とのことであった。

ただ、かなりの大型事業で市民生活に直結するということもあり、建設用地や設計を最終決定する議会は議論が二分。採決は可否同数となり議長採決となったとのこと。その意思決定かかる重圧たるや計り知れない。

東日本大震災を契機に防災意識が高まり、熊本県宇土市役所においては、先の熊本地震により倒壊寸前となり、立替を余儀なくされた。大村市庁舎は築年数52年であり、議会棟のis値は0.27、マグニチュード7以上の地震では倒壊するとされている。

庁舎は市民の生命と財産を守る防災の拠点となるべきものであり、市政実行の前提となる執務空間である。また、市の文化や産業、市民運動の発信拠点という側面もあり、市を体現する公共建築物とも言えるだろう。

大村市についても早期の再整備が必要であるのは間違いない。庁舎再整備の議論は途についたばかりだが、全庁的な議論を加速させるべきである。

 

文責:北村貴寿

 

[i] 佐野ラーメン(さのラーメン)とは、栃木県佐野市を中心として、食べられているラーメンであり、関東地方のご当地ラーメンの一つである。

佐野市の近代の重要な食文化であり、観光資源でもあり、観光振興において重要な役割を果たしている。

竹を使って麺をうつ、青竹打ちの平麺が特徴。これは青竹に脚をかけ、竹の下に麺の材料となる練った小麦粉の塊を置き、体重をかけて延ばしていくというもの。

麺はコシが強く、太さは中太から細麺、平打ちなど、店によって異なる。

コクのある醤油味が特徴とされるが、店によって鶏がらであったり豚骨であったり、東京ラーメンに近い透き通った醤油スープ、 醤油が若干入った塩ラーメンの様なもの、味醂で甘味を付けたものが存在する。

具材についてはチャーシュー、刻み長ネギ(白ネギ)が入ることが多い。

[ii] インテリジェントビル(英:Intelligent building・「賢い建物」の意味)とは、商業の情報化に対応して、電力・通信インフラの強化や、OA化に伴う各種配線の取り回しに配慮した、高付加価値オフィスビルの事である。英語に於いてはスマートビル(英: Smart building・「利口な・気の利いた建物」の意味)とも呼ばれ、日本の建築関連法では高度情報化建築物とも呼ばれる。

[iii] ユビキタスネットワーク(英文表記:ubiquitous network)とは、あらゆるところ、いたるところで利用可能なコンピュータネットワーク をさす。野村総合研究所が1999年ごろから提唱し始めた「ユビキタスネットワーク社会」が語源とされる。

ユビキタスコンピューティング(=コンピュータがいたる所に存在(遍在)し、いつでもどこでも使える状態をあらわす概念)を視野に置いた考え方で、ユビキタスコンピューティング社会の具体的なマイルストーンとして捉えられることが多く、日本の国家政策等にもこの用語が多くあらわれる。

 

 

 

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