厚生労働省崩壊-「天然痘テロ」に日本が襲われる日
木村 盛世 (著)
週刊誌で彼女の記事が気になったので買い求めた。
最近はとんと聞かなくなったパンデミック騒動、官僚でありながら当時の厚労省の対応を効果が無い、と国会答弁し有名になった医系技官、医師免許をもった官僚ですね。
彼女の経歴は面白い。
離婚後、二人の乳飲み子を連れて単身渡米、医師、研究者として名を成す。
日本からのラブコールで帰国するも、アメリカ仕込のやり方が霞ヶ関で通用するわけもなく疎んじられる。
パワハラ、セクハラの挙げ句に飛ばされ続けて最後は空港の検疫所勤務。
そこでパンデミック騒動が持ち上がり一躍脚光を浴びる。
当時は野党だった民主党に利用された感もありますが、本人は何処吹く風で自論を展開しておられました。
前半は官僚による官僚機構のバッシング、中身を知ってるだけにリアリティがありますが、うらみつらみも感じられ、ちょっと感情的かなあ、と。
後半はバイオテロについてのくだりとシュミレーションまで。
読者に語りかける文体で難解なところはありません。あっさり読める一冊です。
・世界初のバイオテロ発生国は日本(オウム真理教)
・公衆衛生=国防という意識や備えが脆弱すぎる
・天然痘を根絶したWHOチームのリーダーは日本人
・官僚機構の硬直性は有事に対応できない
・バイオテロはコストパフォーマンスが高いからこそ恐怖
などなど、色々と勉強になりました。
医は仁術という信念、そして憂国の思いが著者を駆り立てているのでしょうね。
しかし著者は未だ官僚という身分。
飛ばされた検疫所で役にも立たないと自身が切り捨てたサーモグラフィーを眺め続けているのだろうか。
啓蒙活動で国を変えるには時間が掛かるだろう。
自らの理想を実現するには、リスクを取って政治に踏み出せるかどうかなんだろうな。
しかしそれには選挙という洗礼もある。
それは有権者の投票行動が決するという果てしないリスク。
著者も政治に諦めを感じている一人なのかもしれない。