自治体をどう変えるか 佐々木 信夫 (著)
著者は中央大学院教授、小泉チルドレンに講演などを行っており分かり易さには定評がある、という評どおりの本だった。
発刊が2006年と背景が変わっているのでズレがあるのは否めないが、読み応え十分。
印象に残ったのは地方分権下の財源論と地方議会改革のくだり。
交付税や補助金から脱皮し「地方共有税」という発想は地方自治を確立するには欠かせない政策だろう。
中央集権から脱皮するとは言えども、国家としての役割は残す。
外交や防衛、通貨や教育、社会保障等々のナショナル・ミニマム(国の最低基準)は必要だしそれを担保する財源は確保しなければならない。
議会改革で議会をアメリカ型(8万都市で5~6人の超少数精鋭)かイギリス型(100人以上の多数のボランティア)で比較してあるのも面白かった。
私はイギリス型志向だ。
議員は兼職も認められた非常勤特別公務員なので報酬が身分報酬ではなく労働報酬であるというのも初耳だった。
月額給与ではなく、勤務日数に応じて日当支給とするのが報酬の原則であるが、明文規定が無い為にほとんどの自治体が月給制をとっている(福島県矢祭町議会は全国初の日当支給、対馬市でも署名運動がありましたね)。
月給制では登院日数(議会出席日)に換算すれば高すぎる、という話なのだが、議員の活動は議会だけではない。それ故日常の政治活動に注目すべきなのだが「議員芸者」「行事議員」を求めがちな有権者の意識改革も必要だ。
議員マニフェストにも触れてあるが、執行権が無いという矛盾を理解したうえで定量的に目標を定める、というのは私も賛成だ。
しかし数値も期限も記載が無いパンフレットに「マニフェスト」と謳ったものもある。それを見極めるのも有権者のレベル次第なんだろう。
国からの「通達」をマシーンのように実行する時代は終わり、事業官庁から政策官庁への進化を強く訴える。
今でさえ目新しい内容ではないが当時から著者が訴えていることが、徐々に現実になっているという感じ。先見の明ですね。
終章の道州制論については?な部分もあったがとても勉強になった一冊でした。
「地方自治」主筆のK君も熟読中らしい。原稿宜しくね。
またまた公開討論会のコーディネーターの打診が。
かなり突貫工事だなあ・・・