だまされないための年金・医療・介護入門

だまされないための年金・医療・介護入門
社会保障改革の正しい見方・考え方

著者 鈴木 亘  学習院大学経済学部准教授

集中して読む時間が作れなかったので時間が掛かってしまったがやっと読了。
発刊は2008年8月。
なにやら物々しいタイトルだが著者は”あえて”一般向けに書いたとのこと。
なんでも学者はこんなタイトルで分かりやすさ前提に本を書くと評価が下がるリスクがあるそうな。大変ですね。

といっても内容は前半は理論編というだけある。
私は業界人なのでまあ読めるが、ちょっと難しいかな、とも思った。
マクロ経済スライドのくだりが良く分からない。
ただ後半と巻末はその理論を踏まえた上での主張なので分かりやすい。

現在(政権交代前ね)のやり方では

「高負担=低福祉」もしくは「”超”高負担=高福祉」

という選択しか存在しないと言い切る。
「低負担=低福祉、高負担=高福祉」という一見フェアに感じる選択肢は官僚都合の喧伝であり、現在の賦課方式から積立方式&全額税方式(消費税ね)の抜本的改革を行なうしかない、と喝破。

ご承知の方も多いと思うが、現在の我々が納めている年金は収めたと同時に給付に回っている。

少子高齢化が続くとして、

・1940年生まれと2005年生まれの世代間格差は8340万円
・1965年生まれ以降は納め損
・2075年には社会保障負担が所得の40%超

という試算でお先真っ暗。

福田政権下に設置された社会保障国民会議等(殿もメンバーでしたね)で行なわれている議論は、

「現在の高齢者の既得権保護、利益供与」
「先送り主義と情報操作」
「本質的でない論点のすり替え」

と手厳しい。

著者は官僚から批判も受けているそうだが、そもそも官僚の数理モデルが政治家と有権者の投票行動を見据えた恣意的なものだと論破。

積立方式にすれば自分の老後生活資金を自分で積み立てるのだから、出生率は関係しない。「歴史的負債・legacy dept(田中角栄が大盤振る舞いした社会保障制度黎明期の受給者分)」に「二重の負担」を組み入れ将来世代100年ほどに渡って清算するとし、保険料を引き上げるが最後の引き上げ・固定化を行い国民を説得すべし、としている。

ここで気になるのが政権交代した民主党の年金政策。
先般コーディネイトを努めた政権せんたく公開討論会でも

・最低7万円の年金額を保証する
・二階三階建ての部分は喜捨して頂く。

と言い切った。

国民年金の未納率は2006年で66%超。
どう考えてもフェアな政策だとは思えない。

また後期高齢者医療制度を廃止し、老健に戻すという。
そもそもネーミングを発端とした政局がらみのマニフェストだ。

老建では増加を続ける老人医療に対応できず未納が深刻だった。
当該世代が収めるべき保険料を天引きにし、納付率を上げ事務コストを引き下げるだけの話(負担については軽減措置が後だしだったが)。
消えた年金と同じ土俵で論じるのはお門違いだ。
民主党は次世代にどれだけの負担を押し付けるつもりなのか。

まあ、どう考えても選挙のためのリップサービスだろう。現実的な政策に転じて欲しいものです。
自民党もマニフェスト評価は55点だったんですからね。

医療の分野では価格統制を撤廃、開業医=医師会の政治力解体、勤務医の報酬増と混合診療、予防医療の抑制などホットな主張が多い。

介護関係の気になったところでは、現在の自治体による総量規制は革新的であった介護保険制度の理念をないがしろにするものであり、悪循環を招いている社会主義的な暴力支配だと批判。混合診療ならぬ混合介護を導入し競争原理を復活させよ、と説く。

業界人なので得心する部分もあるが、保険者(自治体)ごとの料率設定には、完全な地域主権が前提となる。それに経済基盤が脆弱(長崎県は筆頭クラス)な自治体はますます地域間格差に甘んずることとなり国内移民の引き金の一つとなる可能性があるだろう。長崎県の健保は上がったし。
しかしそれは既得権者の主張にしか過ぎないのかとも思ったりする。
自由化されれば色々勝負もできるかもだし。

少々独善的な視点が多いように見受けられるが、現体制では立ち行かなくなることは明白なので改革の試金石にはなりうるだろうと思いました。

業界人にはお勧め?の一冊です。

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