輿論と世論―日本的民意の系譜学

輿論(よろん)と世論(せろん)―日本的民意の系譜学
著者:佐藤 卓己

著者は京大博士であり気鋭のメディア・大衆文化学者。
氏がNHKで輿論(よろん)と世論(せろん)の違いについて論じていたのに得心して買い求める。

多様なデータや難解な部分、文量もあり途中数回読み返す。集中力が必要な一冊だが、一読の価値あり。

「世論に従って政治をすると間違う場合もある(小泉純一郎)」の引用から始まるこの論文。

著者は、

・輿論(よろん)=public opinion=議論された公論=世を担う意見
・世論(せろん)=popular sentiments=共感する大衆感情=空気

と位置づけている。 

日本的民意の系譜学というサブタイトルどおり、戦前から現在までの歴史的事象、終戦記念日、安保闘争、東京オリンピック、全共闘、角栄と日中関係、天皇制、小泉劇場etcに係る民意形成についてまとめてある。
輿論が世論化していく様やともすれば世論が政治や大衆を先導していく様に警鐘を鳴らし、失われつつある”輿論”復活を訴える。

特に興味深かったのは終戦記念日と天皇制のくだり。

終戦記念日は現在では8月15日と定着してますが、一般化したのは10年後の1955年。その根拠となる閣議決定は戦後18年たってからだそう。

終戦にまつわる日程は、

・ポツダム宣言受諾=8月14日
・玉音放送=8月15日(原稿には14日付)
・降伏文書に調印=9月2日

という中から15日に決まった経緯が面白い。
国民の休日を決める際に世論調査が行われた結果、お盆と左派右派の妥協点だったとは・・・歴史って面白い。因みに政府は国外(9/2)と国内(8/15)については使い分けているそうです。

また戦後の天皇制を護ったのは輿論ではなく、操作された世論がアメリカに影響を与えたからだったとは。したたかな戦後の日本人に感服する。

巻末には無責任な世論調査を繰り返すメディアを批判し「一人から始まる輿論」と銘打ち、世論の空気に対してたった一人でも公的な意見を叫ぶ勇気こそが大切だと説きインターネットの可能性にも触れてある。

「一人からはじまる輿論」として、HPやブログなど「ネット輿論」にも可能性はあるに違いない。
もちろんネットを利用した新公共圏でのネット市民の熟慮が促されるという白昼夢は論外。しかしネット上で直情的な発言の応酬が圧倒的であればあるほど、「公議輿論」と「不惑世論」は輝く。
ある発言を前にして、それが輿論か世論かと悩むことで、民意のリテラシーは向上する。世論に流されず輿論を担うだけのリテラシーを得た上であれば、意見表明、情報収集の手段としてネットには無限の可能性がある。

最近気になる世論調査結果といえば、やはり選挙情勢。
有権者のメディアリテラシーはどういう結果を導くのだろうか。

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