「アメリカ外交 苦悩と希望」 著者 村田晃嗣
8月9日。毎年この日には戦争の記憶についての記事をエントリーしていましたが今年はオバマ発言が何かと話題なのでアメリカ関係本の書評を。
著者の主張を長野で拝聴し感銘を受けたので買い求めた。
上梓は2005年2月
アメリカ建国から南北戦争、大東亜戦争、朝鮮戦争、ベトナム、冷戦、湾岸、911テロ、イラクまで歴代のアメリカ大統領と戦争にスポットを当てながら、アメリカの歴史と変遷が網羅的に解説されている。
著者自身が”スケッチ”と卑下するようにやや雑駁な感は否めないが、外交に詳しい人間が読めばポイントを外さず簡潔に纏めたものだ、と高い評価を得ているようだ(私はドシロウト)。
レーガン大統領のくだりあたりからは記憶にある出来事も多かったので、すんなり読めた。長野では著者の聡明さに舌を巻いたが、文体もキレが良くポジティブで明るい。
とても論理的で事象に対する分析や見解をもう一歩深く考えさせてくれます。
核兵器廃絶はオバマ大統領だけが訴えているのでなく、手法は様々だがジミー・カーターやロナルド・レーガンも唱えていたんですね。
昨今田母神氏に代表される「核には核」という安直で軽薄な主張がいかに大局観を欠くものか分かります。
まあこれも著書に言わせれば、分断を論じるならば、統合を知らなければならない、という所でしょうか。
また日本の混乱する自国イメージ、外交と安全保障についての大局観、知識と教養が満載の良書です。
でも耳慣れない歴史用語が多くちょびっと難しいかも。
巻頭にはトクヴィルの引用
一つの国についてしか知らない者は、実はその国についても知ってはいない
ではじまるが最後は当ブログでも何度か紹介したニーバーの詩の引用で締められており文学的だ。
世界が平和でありますように。
戦争を回避する自制が打ち捨てられませんように。
ニーバーの説く勇気と冷静さと知識が我々に備わらんことを。